「続けて十八番目の罪状を確認する」

「はいどうぞ」

「滞納された税の徴収に来た騎士を川に落としたのは間違いないな?」

「そんなこともあったな、あれ、デコだっけ?」

「そうだ!お陰で私は風邪をひいて三日間寝込んだのであーる!」


罪状の確認と言っても九割はユーリの話。一割にいくかいかないかぐらいでなまえの話。どうやらお城の壁を壊したことに関しては本人が思っていたよりも重要ではないらしい。それらを一緒に聞かされているカロルとリタは飽き少々に不安が気持ちを占めていた。主にカロルが。


「あといくつあんの?飽きてきたんだけど。...なまえだってそうだろ?」

「飽きてはきたけどゆっくりお話が出来る今のうちに騎士さんにパパのこと聞いておきたいな、っていうのが本音?」

「お前の父親って騎士なのか?」

「それもお偉いさんみたいなの。だから行っても会わせてもらえないと思ってわざわざ壁壊してお城に入ったのに。」

「へえ...」

「ええい!!次の罪状確認をするのであーる!!」


ああまだ長い小言が続くのかと罪状確認をさせられている主な二人はげんなりする。そのとき、薄暗い詰所の扉が開く。まためんどくさい騎士が増えたのだろうと二人は顔をあげる。


「!!」


なまえは入った人物に驚いて目を見開いた。さっきまでの小言ルブランが彼に向って一転して態度を変えていた。彼の上司なのだろうか。聞いていればルブランは彼を"騎士団長閣下"と呼んでいた。つまり騎士団で一番上にいる人物なのだ。ユーリも驚いていた。元々騎士団にいた彼なら知っていて当然だが、こんな海を越えたところにくることに驚いたのだろう。


「エステリーゼ様、ヨーデル様の両殿下のお計らいで君の罪はすべて赦免された」


正直最初は何を言っているのかわからなかった。少し血の上った頭では理解に少し遅れが出た。でも我に返って考えればそれはユーリに向けられたものなのだと簡単に結論した。


「ヨーデル様の救出並びに、エステリーゼ様の護衛、騎士団として礼を言おう」


彼の秘書がユーリに袋を手渡そうとする。中から金の擦れる魅力的な音がした。しかしユーリはその受け取りを拒否した。


「そんなもんいらねえよ、騎士団のためにやったんじゃない」

「そうか。」

「その変わりって言ったらあれだけど、ついでにこいつの壊した壁の方もチャラにはできねぇのか?」

「え、ユーリ?私は別にそういうの...」


そういいつつも様子を窺おうと顔を上げる。当然のように騎士団長閣下殿と目が合う。それにびっくりしてなまえは勢いよく立ちあがってしまう。そしてしばらくの沈黙の後


「指示を仰ごう」




⇒欲しかったのはこんな痛みじゃない




「よかったななまえ、結局全部チャラだろ?」

「あ、あ、うん、そうだね」

「なによあんた。また暗くなちゃって、らしくない」

「うん、ずっと雨で太陽さんが恋しくて...」

「なまえ雨好きじゃないって言ってたもんね。どっかで休む?」

「ううん、私は大丈夫。...。...あ」

「お、晴れてきたな」

「太陽さぁん!久しぶりぃ!!」

「いつもどうりのなまえだったね」

「だな」

彼らは知らないままだろう。私自身太陽に照らされる地面のように簡単に乾かないほどの雨を抱え込んでいること。

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