恐くなんてない、って言ったら嘘になる。けど恐いわけではなかった。うーん、言葉ではうまく表せないな。でもみんなみたいに"未知のものに立ち向かう恐怖"ではなかった。どちらかというと"みんなを守れなかったときの恐怖"だったのかもしれない。

最初は私とユーリとラピードだけで戦ってたけれど、途中からエステルとリタが復帰。大きいし攻撃範囲も広いし甲羅で攻撃がはじかれてしまうし。私も何度も吹き飛ばされたけどそのたびエステルが大丈夫ですかって慌てて治癒術をかけてくれた。ありがとうって言って剣を握ってまた走りだすと後ろから魔物めがけてリタの放った火の玉が私を追い越していく。魔物の動きが止まっている、援護してくれているんだ。走りやすくなったときユーリとラピードが並んで走ってくれる。そして一緒に技を決めた。

技を使いすぎた私たちがへとへとになると、魔物の動きが止まった。まるで私たちがもうこれ以上戦えないことを理解したようだった。すると魔物と目があった。びっくりしたけど、不思議と恐怖はなかった。

そして私たちにこれ以上の危害を加えるでもなく大きな足音をたて、どこかにいってしまう。


「はあ、助かりました...」

「...カロルは?」


そういうリタの後ろで先程竜使いに壊された魔導器の残骸が落ちてくる。そして真上に広がる泉の水が雨のように降ってくる。ああまた雨だ。


「天井が...!ここは危険です!!」

「俺たちも退くぞ」


ユーリがそう言っている間にも泉の水の雨は強くなっていってる気がする。リタはラゴウの屋敷でも同じように魔導器を壊した竜使いに苛立ちを隠せない。私はそれよりもカロルくんの行方が気になるところだけど、こんな状況じゃここにはいないと思うし、先に走って行ってしまったリタを追いかけて走りだした。




⇒(私がこんな風に考えているなんて思いもしないんだろう)




忘れられないのはあの魔物の優しい瞳。そしてそれを見るのは初めてではなかったあの感覚。


「なまえ、大丈夫ですか?どこか具合でも悪いんですか?」

「あ、ううん、大丈夫。全然大丈夫だよ」


私にはなかったエアル酔いを心配してくれたエステルに笑って答える。
あの憂鬱だった螺旋階段を上り切ってまた雨が止まない外に出ればカロルくんがいた。よかった怪我もなくて無事みたいで。
結局探してた傭兵集団はここにはいなかった。まあレイヴンさんも傭兵集団だとは言っていなかったけれど。一人今までに押し寄せてきた感情に浸っていると前を歩いていたユーリがいきなり止まった。前を見てなかった私は彼の背中と衝突。何事かと我に返ってみるとラピードが威嚇してて、その先には私たちを待っていたように、帝国の騎士団が立ちふさがっていた。

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