ここ(貴族街)は空気が悪い。
いや、気体事態は市民街と変わらないが、そう、本人が感じる雰囲気的なものの話だ。確かに一時帝都には住んでいたがそれ自体記憶の奥底に埋もれて出てこない。新しい記憶の隙間からかすかに見えるのは、父と母がとても仲良くしていた場面。私は、そこにいない。父と母が大好きだった私はいつもひとりだった。今だってそう、皇帝の根城の前に立っているのは私ひとり。


(このお城に、パパがいる)


この歳にもなって父の後を追って旅をしているなんて言ったらみんな私を笑う。けれど私には父を探さなくてはいけない理由がある。言わなくてはいけない、母が病で還らなかったこと。


(話によると...)


世に言う田舎者の私は父の仕事のことをよくは知らなかった。故郷を出て一番最初に立ち寄った少し大きな街で父のことを聞いたらいろんな人に驚かれたのは記憶に新しい。父が有名でいてくれたおかげで迷うことなく帝都まで来られたのだが。
だが有名すぎるとお城に入ったことでこんな小娘ごときには会わせてくれないことぐらい田舎者でもわかる。門前払いものだ。お城に住んでる人は簡単に市民の前には現れない。私はそう認識していた。
だったらどうやって入ろうか、とこんなお城の前で悩んでいるのだが。


(...あ、あの町と一緒の方法で)


方法と言うには少し誤りがある。故郷でいたずらっ子が壁を壊せばすぐに駆けつけてきた大人たち。そのあとこっぴどく叱られてはいたがまた繰り返す。子どもたちにとって壁を壊す行為は"不可抗力"だったのだ。
私は故郷のいたずらっ子たちと同じ気持ちで近くにあった白くて綺麗な壁を今までにないくらい、思い切り、殴って砕いてやった。




⇒欲しかったのは、億万長者みたいな贅沢な生活じゃない




すると思ってた通りお城の前に立っていた騎士団の人が走ってくる。私は取り押さえられる。お城の中に連れて行かれ、地下の牢屋に入れられた。
ただ違ったのは、先客が二人もいたことだ。同い年くらいの青年と楽天主義なおじさんだった。

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