ガタガタと不穏な音を立てる頭上。
敵の侵入かと身構えた俺だったが、なまえは動じなかった。この行動の答えがわかっているかのように。
「そぉいやっさぁ!!」
聞き覚えのある声と共に破壊音をたて俺たちの頭上に影が差した。
その馬鹿でかい影はやっぱり見覚えがある。
「メガザラックっ...」
なまえが彼の名を口にした。
その彼の向こうには、俺たちが目指していた星の輝く"暗くない闇"が見えた。
道を作ればいい、それは文字通りの強硬策だったわけだ。
「アルファQ様の命令だ。早く行け。」
だがメガザラックが破壊した星帝の装甲はすでに復元を始めていた。
早くしないとまた出口の見えない迷路を彷徨う羽目になる。だが呆気にとられたなまえは動かない。
俺は繋いだままのなまえの手を思い切り引いて、エンジンを点火した。
彼の開いた道を迷うことなく突っ切った。
外に放り出されたら、さっきまでの焦りや騒音が嘘のような静寂。
聞こえるのは遠くで戦う仲間の音。
俺たちの手はまだ繋がったまま。
文字通り宇宙に放り出された気分だった。
振り返れば、もうそこにメガザラックはいない。彼が破壊した装甲までも綺麗に修復されていた。
きっと俺たちと入れ違いで星帝の中に入り込んだのだろう。
アルファQを助けるため。引いては司令官を助けるため。
もうそこには俺たちを引き止めるものは何もなかった。
もう一度なまえの手を引く。
俺を見るそのカメラは青く揺れていた。
彼女の中でいろんなものが波立っているのはみてわかる。
でも、それでも、俺は最初に伝えなきゃならないことがある。
手を離し、なまえを思い切り、抱きしめた。
「おかえり、なまえ」
好きなヤツが無事に帰ってきたんだ。いうことはこれだけでいい。
すると控えめに背中に腕を回してくる。最初は弱々しかったが、夢から覚めるように強くなってくる。
「ただいま、スカイファイヤーっ」
共に在る
ようやっと、俺たちの思いが通じた瞬間だった。