膝を抱えるなまえに手を伸ばす。反応はない。
何があってもここを離れない気だとすぐにわかった。わかってた。出会ったときから変に頑固だったから。


「"私"を信じてくれたみんながいるあの星を守りたい。みんないる星は守られる。それで、いいじゃない。」

「そのあとはどうなるんだよ。司令官は星を守ったら星帝を壊すんだ。そうなったらお前はどうなるんだよ。」


自分でも驚くほど低い声が出る。
それを聞いてなまえが少し震えた。俺は怒ってるわけじゃないのに。
思えば思考の衝突なんて今までしてこなかった。物理的な衝突はしょっちゅうなのに。
だから二人してどうしたらいいのかわからないんだ。


「みんなが嫌う"嘘つき"がいなくなってみんな喜んでくれる。私がいなくなるだけなんだから、それでいいじゃない。」


だがなまえの"嘘つき"の言葉に先に吹っ切れたのは俺だ。
許さない。
もう"嘘つき"をやめたお前がその言葉をまた口にすることが許せなかった。
俺はそんなこと言ってほしくてここまできたわけじゃない。


「ふざけるな。
お前がよくても俺はよくない。
いいかげん"嘘"つくのやめろよ。本当はそんなこと思ってもいないくせに。俺にも言えないことかよ。全部かなぐり捨てて、あの星出てく覚悟してここにきてる俺にも言えないのかよ。
俺はそこまでしてでもお前に帰ってきてほしいんだよ。お前のことが好きだ。愛してるんだ。だから手段も形振りも構わずにここまで来たんだよ。お前がいなくなってあの星が救われても、俺はよくないんだ。俺はお前と一緒がいい。一緒じゃなきゃ嫌だ。お前が思う事全部知っておきたいし、お前の言葉が全部欲しい。ああそうさ。副司令なんて似合わないような男だ。お前の事独占したいなんて思う欲にまみれた男だ。だからお前からほしい。たった一言、お前が俺に言ってない言葉があるはずだ。俺はそれが欲しい。
役職に縛られてお前を捕まえておけなかった俺だ。でもお前が悲しんでたり苦しんでたりしたとき、最初に助けたのも俺だ。
でもお前がその言葉をくれたら、俺だって本気で願いを叶えてやるし、もう"嘘つき"なんて誰にも言わせない。
だから何度だって言う。
俺はお前が好きだ。だから俺に"その言葉"をくれないか。」


ゆっくりと顔を上げるなまえ。
俺の知ってる、嘘も偽りもない平和を夢見る青いレンズだ。
レンズの奥にある光が揺れている。
お前に泣いてほしくはない。だがそれがお前の本当にしたいことなら、"嘘"じゃないなら全力で受け止めてやる。


「...っ、"たすけて、すかいふぁいやー"...っ!」

「当たり前だろ」


その言葉をくれた彼女が立ち上がり俺に抱きつく。
俺はそれに応えなければならない。
だからもう二度と同じ過ちを繰り返さないようにきつく抱きしめた。




明日が来ない彼女の話

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