一歩踏み入れればそこは闇。一切の闇。目指す先なんて見えない闇。
敏感なセンサーもお手上げ状態。わかるのは視覚で確認できるだけの闇。
脇目も振らず真っ直ぐ前だと思う方向へ歩む。
何も見えない、聞こえない。
時間の感覚も麻痺していることにようやく気付いたのはそれすらもいつ思ったことなのかわからなくなっている時だった。
つまるところ既に手遅れ。
あらゆるセンサーがエラーを発し、何が正しくて何がそうでないのかわからなくなる。
無意識に垂れた頭。だが見えるはずの自分の足元はない。あるのは闇。

スカイファイヤーはこれが"絶望"なのだ、とそこだけはっきりした意識の中で結論付けた。

だが振り返ろうとはしなかった。

振り返ったらもう何もかも戻れないような気がした。
だから前を見た。
歩みは止めても後ろだけは見てはいけない。
その意思は闇の中で光るほんの微かなものだ。
でもそれで充分だった。
それさえあれば自分は前へ進める。

いつだってそうだった。

誰かが"俺たち"の仲を裂こうと画策していたときも、"あいつ"が一人で苦しんでいるのに気付いて駆けつけるときも、"お前"が俺を見つけて笑ってくれたときも、いつだってスパークの奥底にあったのは微かな光だった。
存在を主張することもなく、でも確かに光っていたその"星"は、自分を導いてくれる"想い"だった。

だから助けにきたのだ。

スカイファイヤーは納得する。
本当はお互い様なのだ。
同じ"闇"を抱え、同じ"想い"を持ち、同じ"星"を眺めていた。
今ならわかる。
"彼女"が"自分"と"同じ未来"を望んでいること。

手を伸ばしても届かない"星"だ。
でも届くことを信じ続けたっていいじゃないか。
今なら届く。望む未来が同じだってわかった今なら届く。


「なあそうだろう、なまえ」


手を伸ばした先には独りで"星"を守り続ける"彼女"がいた。




君の幸せを願うことしか出来ない愚かで卑屈な俺に

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