雑音だけの回線をひらく。
いつもならこの回線をひらけばなまえが答えてくれるのに。
なんで、そこにいないんだよ馬鹿野郎。

あのとき、何かから逃げるように飛び去ったお前を追いかけてればこんなことにはならなかったのか。
そうしなかったのは俺がいろんなものに縛られてたから。
なんて、これは言い訳だ。

でもなまえだってきっと気がついてるはずだ。
俺がどんなに助けてやるって言っても実際叶わないこと。

だからもうあいつを苦しめるのはやめてくれよ。
一番嘘ついてるのは、俺なんだから。

雑音に混じって声が聞こえる。
この回線の向こうには、きっとなまえがいる。
俺は名前を呼ぶ。
好きな奴の名前を呼ぶ。
答えてくれるようになまえの声が聞こえた。


「ありがとうすかいふぁいやー」


なあ、違うだろ。
それじゃないだろ。
もっとほかにあるだろ。

頼むから、その言葉を俺にくれ。
そうすればきっと俺は形振り構うことなくお前のところにいけるのに。

ああ、柄じゃない、わかってる、




きみが泣く




でもそうさせるのはお前だけなんだからな。

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