「じゃあねなまえ、なんかあったらすぐ呼びなさいよね!」
「え、あ、うん、大丈夫だよ...?」
今日は土曜日。学校は午前だけの授業で終わり。昼休みには帰宅出来るけど私と凛ちゃんは屋上で持ってきたお弁当を広げていた。
これからアルバイト帰りのランサーを迎えにいって、スーパーで食材を買い込む予定だ。でもランサーのアルバイトの終わる時間まで私は時間を持て余していた。
そんな私に凛ちゃんは付き合ってくれたのだ。ほんとうにありがとう、凛ちゃん。
でも帰り際の過剰なまでの心配はどこからくるのか。あの教会は、凛ちゃんが思ってるほど危険な場所ではないのに...
門の前で凛ちゃんと別れた私はランサーのバイト先に向かう。最近新しいバイトを始めたのだと楽しそうに話してくれたのは記憶に新しい。
教会からだとさほど遠くない場所だけど、学校からだと少し遠い。バスを使おうと一人で道を歩く。
角を曲がると、そこは人通りの少ない道。普段はぽつぽつと人とすれ違うが今日はそれすら見当たらない。
「...なんか、」
なんか、おかしい
私は道の真ん中で立ち止まる。
今日は土曜日。道が混んでもおかしくない日。確かにもとから人通りが少ない道だが、近くには住宅街がある。
違和感を感じだしたら止まらない。嫌な予感がして冷汗が流れそうだ。
凛ちゃんがあれほど心配してくれたのは私の家の事情のことじゃなくて、その道中のことだったのかもしれない。今更思い返しても、全部後悔として私の中に沈んでいく。
ふ、と
背後に誰か立っている。
距離は遠い。こちらに近づいてくる気配も音もない。
その存在はきっとこの違和感の根源だ、と勝手に思い込む。でも外していない自信がある。
相手が動かないなら、私が先に動く
ゆっくり、ゆっくり、振り返る
そこにいたのは、全身に刺青の入った少年。年齢はきっと私と近い。でも普通の子ではない。その存在はどちらかというと"うちの居候たち"に近かった。
唖然とする私。足も手も動かなかった。でも目はあったまま。
その目が細められ、口が開かれた
「なんで約束破ったんだよ」
その言葉を聞いて私は悟った。
彼は、この世のすべての悪-アンリマユ-なのだと。
そこから、私の視界は、暗転した