「あっ、ギルガメッシュそれはずるい!」
「何を言うか、我は手加減をしているのだぞ」
「それもずるい!」
今日が休日かと聞かれたらそれはノーだ。だったらなぜ私が家に籠っているのか、それはこの傲慢王、いやいや、英雄王のお陰だ。
言われるがまま彼にゲームのコントローラーを握らされ格闘ゲームをやらさせられている。
毎日学校に行ったり家事をこなしたりと結構忙しい身なのに、毎日ニートしている彼に勝てるわけがない。
「やっぱ無理だよなー」
「ランサー変わってよ!」
「もうこいつに負かされるのはごめんだ」
後ろで観戦していたランサーに助けを求めたが、どうやら彼をもってしてもこの英雄王には勝てないらしい。
ギルガメッシュに勝てないことはよくわかった。でもそのままでは心にわだかまりが残る。言えば悔しいのだ。個人としてはいっつもふんぞり返っている彼にひと泡吹かせたいところ。
...どうやら秘密兵器を出す時がきたようだ。
コントローラーを置いて私は立ち上がる。
「どうした?もう終わりか?」
勝ち誇った笑みで私を見上げてくる。これは、やっぱり悔しい。
でも今は我慢だ。知ってるんだよ、ギルガメッシュ。この家には唯一勝てる人がいることを。
「綺礼!綺礼!!ギルガメッシュに勝てないから手伝って!!」
「んなっ、なまえ!貴様卑怯ではないか!!」
「ギルガメッシュだってさっきまでずるしてたからおあいこでしょ!」
「させるかっ!奴が来たら勝てるものも勝てん!」
私が綺礼のいる部屋を目指して駆け出せば後ろからギルガメッシュが追いかけてくる。
ニートしてたって彼はサーヴァント。生身の人間が勝てるわけないじゃないか。部屋を出てすぐに捕まってしまった。
だがずっと綺礼、綺礼、と呼んでいたのが聞こえていたのか、廊下の角から綺礼が姿を現した。その手にはさっきまで私が持っていたコントローラーと同じもの。
私が勝てると悟ったのと同時に、ギルガメッシュは顔色を変えた。
「ランサー!これで勝てるよ!」
「おー、よかったなー。さっさと帰ってこいよなー」
この英雄王に勝てるのかと思うと嬉しくて嬉しくて仕方ない!腕を掴んでいる手をすり抜けてゲーム機のある部屋に舞い戻る。そこにはさっきと変わらずランサーがソファに寄りかかっている。
「よかったな、」
「ん、なにが?」
「お前が幸せそうで何よりだ、って言ってんだよ」
そう言うと私の頭をぐしゃぐしゃと勢いよく撫でてくれた。そんな些細なことでさえ嬉しくなってしまう。
「ランサー」
「ん?」
「ありがとう!」
今の私は純分過ぎて死んでしまいそうなぐらい幸せです