「あ、」

「お。」


ランサーとばったり出くわした。教会の方へ向かうバスがくるバス停で。ランサーは笑いながら手招きしてくれる。バスを待つ人の列のちょうど真ん中にいた彼のそばに行けば、いきなり肩に手を回された。


「今日は随分遅いお帰りだなぁ」

「クラスの人が薄情でね、さっきまで寝てたの」


誰も起こしてくれなかったんだよ、と笑ってごまかしながらそう話せば今まで笑っていたランサーが少し険しい表情をして私の顔を覗き込んできた。何事かと私はびっくりして硬直している。


「なんだよ、お前そんなに疲れてんのか?」


一番最初に心配してくれるのはいつもランサー。でもそれは、戦争が終わった今でも私が彼に"魔力を供給している"という事実があってのもの。そうでなければ、きっと、わたしは、


「そういうわけじゃないよ。ただ朝から大変だったからね」


やめよう。これ以上考えるのはやめよう。

だって私の言ったことだって事実だ。朝から綺礼とどんぱちして、負けて、麻婆豆腐たべて、HPが赤くなりながら学校行ったら、そりゃ疲れる。
帰ってからだって夜ごはんの準備したり、できなかったら綺礼とまたどんぱちして、今日出された課題やって、時間が足りる気がしない。一日がもう二、三時間あればいいのにと切に思う。


「晩飯は絶対勝とうな...」


そう言ってランサーはバスの来る方を向いてしまった。私もつられてそっちを見るが、まだバスの影は見えない。

そういえば、と疑問が浮かぶ。


「ランサー、バス乗らなくても帰れるよね?」

「ん?ああ、帰れるぞ」

「お金もかかるのに、なんで?」


普通の人が聞けば何の変哲もない会話だが、私がその言葉に込めた意味としては「バスに乗らなくても(跳んで)帰れるよね」になる。ランサーもそれがわかっての今の返答だ。
首をかしげる私をランサーが見降ろしてくる。なんでこう私の家の人はみんな大きいんだろうか。


「なんとなくだよ」

「なんとなく?」

「そ、なんとなく」


そう言うとまたそっぽを向いてしまった。ランサーもとうとうここまで余生に染まってしまったのか、ということにしておこう。


「理由があるとしたら、」


しておこうかと思ったのに、ちゃんとした理由があるならそっちのほうがいい。今度は私がランサーを見上げた。彼はそっぽ向いたまま。


「心配だったんだよ、お前が。戦争終わったってのにしけた面してたからよぉ...」


なんて答えたらいいかわからなくて、俯いてしまった。こういうのを、恥ずかしいというのだろうか。
でも何も返事しないのは申し訳ないから彼の着てたアロハシャツの裾をちょっと引っ張ってみた。
すると肩に回された手がどいて、頭をぽんぽんとされた。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -