スペースブリッジを抜けるとそこは何もない宇宙、ここには誰もいない、よかった、これで私はみんなの前で"ダブルフェイス"にならなくて済む
ジェット機だった体を変形させ体を投げ出す。体は宇宙をゆっくり進んでいく。
このままどこに向かっているんだろう。...どこでもいい、このまま錆びて鉄屑になってしまってもいい。そうすればみんなの中の私は綺麗なまま、
「...違う」
ああ、これじゃまた私は"嘘つき"になってしまう。ほんとうは、
「...。...いやだ、いやだっ」
みんなに会えないことがいやだ。インフェルノに、ホットショットに、ロードバスターに、キッカーに、ミーシャに、オムニコンたちに、司令官に、スカイファイヤーに、あえないのがいやだ。
みんなが笑ってくれたのを思い出してカメラアイが熱を帯びる。冷やそうと冷却水が零れる。小さな水の塊が私の周りを囲む。
「...ぅ、うぇ...。...ひっく、」
誰にも届かない私の声。昔からそうだった、嘘ばっかりつくから信じてもらえない私の声。
「...すかいっ、ふぁいやー。...スカイファイヤーっ」
一番最初に信じてくれたのはいつだって彼だった。真っ先に助けてくれるともいってくれた。無理だってわかってた、だって彼は副司令だもの。
でもそう言ってくれる声が好きだった。私と違う、みんなに信頼されている声が。
あえないのだ、もうあえないのだ
彼だけではない、私は自らみんなを"裏切った"のだから。もう、信じてもらえないのだから。
「ひとりって...っ、ひとりって、こんなに...」
独りがこんなに寂しかったことを初めて知った。
欲しかったのはこんな痛みじゃない
無音の宇宙に私の泣き声だけが聞こえる。その隙間をかき分けるように声がする。その声は"なまえ"と言っている。そうだ、それは私の名前。顔を覆っている手を少しずらして暗い宇宙の先を見据える。
「なまえ!!」
キッカーだ。キッカーの声が私の名前を呼んでいる。嘘つきの名前じゃなく、私の名前を呼んでいる。
「なまえ、おい平気か?どっか怪我とかしてねぇか?」
自らの顔を覆う私の手に触れキッカーはそう聞いてくる。目から零れでる冷却水は止まらない。むしろどんどん溢れてくる、視界が滲んでいく。
私は何かが切れたみたいに大声を出して泣き喚いた。
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前回の続き、宇宙漂流中キッカーに見つけられる。後ろではロディの船が構えています。