キタコレ!!!
迷宮から保護していたアル・サーメンのドゥニヤの葬儀が行われた。アラジンやヤムライハ、王宮の侍医たちの尽力空しく、ドゥニヤは原因不明のまま衰弱し亡くなってしまった
「おい…遺体を見たか?」
「ああ、なんだありゃあ…まるで……干からびた黒炭のようだった…」
悔しそうに顔を歪めるアラジンとアリババくん。ヤムさんも涙を流しながら花を炎の中へと投げ入れる
実はアラジンと一緒に1度だけドゥニヤさんには会ったことがある。最初は少し警戒されていたが最後の方では心を開いてくれてた気がする
本当は穏やかで優しい人だとすごく伝わってきた。どうしてこんなに辛い目に遭わなければいけなかったんだろう
私は忘れないよ、ドゥニヤさんとドゥニヤさんのおっぱいのこと!
ぐっと拳を握りしめ涙を浮かべながら海を見ていると白龍くんが隣に並んだ
「なまえ殿…」
「ん?」
「少し、考えていました…俺もこうなっていたかもしれない。何も知らずに、組織の力を借りていたら」
「確か煌帝国とアル・サーメンって繋がってるんだっけ?」
「はい、国が何かに取り憑かれていることには…煌帝国の者たちも、皆気づいているのです。マギ、ジュダルとその付き人たちは、煌帝国建国直後からつきまとうようになった…以来、迷宮をはじめ、様々な形で煌の武将たちに尋常ならざる力を与えてきたのです。俺と誘いに乗っていたら、どうなっていたか…」
「白龍は何でその誘いを断ったの?」
「…それは、俺が、他のだれよりも組織の本性を知っていたから…俺の家族は…皆組織に殺されました。父も、兄たちも…」
「!?」
「もっとも、その事実は組織と繋がるある者たちにより完全に歴史から消され、俺の姉すら知りません」
「白龍くんも随分と重いモノ背負っちゃったんだね…それを私なんかに話してよかったの?」
「どの道遠くない未来に世に知らしめる真実だし、シンドバッド王にももう話しました。しかし、何より…迷宮で何一つ打ち明けない俺を助けてくださった恩人のあなた方にこそ、少しでも自分の本心を話しておきたかったのです。別れる前に……」
「そっか…白龍も帰っちゃうんだったね」
「はい…妙な話をしてしまいました。そういえば、なまえ殿の国はどこに?家族はどちらに?」
「私の国はね、すごく遠いとこにあるんだ。家族もそこにいるよ、でも遠すぎて帰れなくて、旅をしている内にここにたどり着いた。今はここが私の家でみんなが家族かな」
「…どうやっても帰れないのですか?」
「帰り方がわかんないんだ、道的な意味じゃなくてね。どうやって帰ったらいいかがわからない。それに帰ったらもう2度と皆には会えない」
寂しそうな顔で笑い、今にも消えてしまいそうななまえに白龍は息がつまった
「おっと、今のは気にしないで!まーなんとかなる精神で生きてる私だからさ!そんなに私も気にしてないし!」
「だったら…そんな寂しそうな顔しないで下さい。なまえ殿の周りにはたくさんの人がいます、もちろん俺もいますから…だから笑って下さい!なまえ殿には笑顔がよく似合う」
「ありがとう」
薄っすらと涙を浮かべながら綺麗な顔で微笑むなまえに白龍は自分の心臓が跳ねるのを感じた
「紅玉ちゃーん!!」
「きゃあ!なまえ!?」
「何してんのー?」
アリババと何やら言い合いをしている紅玉に飛びつくなまえ。どうやら紅玉はアリババと手合わせしようとしているらしく、金属器を構えると全身に魔装した
「さぁ、あなたもジンを宿しなさい!」
「紅玉ちゃん可愛い!!かっこいい!!でもアリババくんはまだ全身魔装できないよ」
「はぁ?」
「これは見事だね」
シンドバッドの登場に紅玉は顔を赤く染めシュ〜と魔装を解いてしまう。しかしシンドバッドは手合わせをする為に来たようで、紅玉にもう一度力を見せてくれるように頼み、そして
「我が身に宿れ、ヴィネア!!」
「我が身に宿れ、フォカロル!!」
「!!二人とも全身に魔装したっっ!?」
全身を魔装した2人は空高く飛び上がり、激しく打ち合う。
いや楽しそうで何よりなんだけどさ、周りの被害考えて、木とか岩降ってきてるんですけど
なまえはとりあえず辺り周辺を防壁で覆う。
戦いはヒートアップしていき、紅玉は極大魔法を放つ、だがそれはシンドバッドにより受け止められてしまった。
そしてシンドバッドは二つ目の魔装を身に纏う
「我が身に宿れ、ゼパル!!」
「ゼパルキターーー!!ぎゃんかわ!!」
「アリババくん耳をふさいでいなさい」
「えっ!?」
ゼパルの能力を知っている者は、サッと自分の耳を塞ぐ。なまえは防壁魔法の中でゼパルの可愛さに悶えている。そしてシンドバッドが口を開けた瞬間、空気が震え、防壁がビリビリと振動する。それをもろに食らった紅玉や従者、周りにいた武官達がフッと力が抜けたように倒れていった
「こ…紅玉さん、どうしちまったんだ!?」
「眠るように彼女の精神に語りかけたんだ。これがゼパルの力さ。ただ、技が大味で、周りにも少々影響を与えてしまうのがいけないね…」
「すっ…少しぃ!?」
「シンさん可愛いもうやだゼパル好き」
「はっはっはー普段もこうだと嬉しいんだがな!」
シンドバッドを抱きしめ頬擦りをするなまえ、普段は触れない胸もこの時だけはなまえから押し付けてきてくれるのでシンドバッドも満更ではない
「もうシンさんずっとゼパルでいたらいいのに」
「普段の俺を全否定しないでくれなまえ」
「癒されるぅ〜」
「なまえ聞いてる?」
無我夢中で頬擦りするなまえにシンドバッドの声は聞こえていないようだ。魔装を解くとすぐさまいつものように素っ気なくなったなまえにシンドバッドは凹むのであった。
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