今日だけなんでも許してあげる
主:半兵衛友人
「なまえ、三成君の事なんだけどね…」
「あぁ、どうした?」
「君に頼みたいことがあって。」
もうすぐ全国を統べるようになるであろう豊臣秀吉に仕える、石田三成という男。
奴は極度に欲が薄く、前の戦で功績をあげたのにも関わらず、その褒賞は秀吉と半兵衛の称賛だけで満足だと言ったそうだ。知ってはいたが、本当に真面目な男だ。俺なら城ひとつとか休み一月とか無理難題をふっかけてみるのに。
「三成、いるか?」
そして褒賞を受け取らない三成が望むものを聞いてこいと俺は駆り出された。女王さm……部下思いの半兵衛に。
「なまえさまっ!?」
三成はわりと俺を慕ってくれている。懐いていると形容してもいい。そんな俺になら少しは話してくれるかと淡い希望を抱いてきたわけだが…
三成の部屋へ声をかけると中から上擦った声が聞こえ障子が勢い良く開く。
「こ、このような場所になまえ様が…いかがなさいました?」
「いや、少し三成と話したくてな。」
「なまえ様…!身に余る光栄です!」
瞳を輝かせた三成はてきぱきと座布団を出しどうぞとかしづく。俺が座布団に座るときには既に熱いお茶が用意されていた。
目にも止まらぬ早技だ。秀吉が気に入ったのがよくわかる。
「三成、」
「はい」
「何か欲しいものはないか?」
「私は秀吉様の治める天下があればなにも。」
「……じゃあしてほしい事とかでもいいよ。なんかあるだろ。」
「そんな恐れ多いことは…!」
「いいから、言え。」
あわあわした三成が、では…と口を開く。
「………ふ、触れても、よろしいですか…?」
「触れる?俺にか?」
「は、はい…。駄目でしょうか…」
「そんなことでいいのか?」
「は、はい!」
好きなだけどうぞと言ってやると三成は、恐る恐る俺の手に触れる。
ひんやりとした手が俺の手の上に重なる。好きにさせてやると、三成はそれ以上何も行動を起こさなかった。
「三成?」
「…はい」
他には?と聞こうとして口をつぐんだ。三成がものすごく幸せそうな顔をしていたからだ。
「これだけでいいのか?」
「もう、幸せで死んでしまいそうです…!」
「それは困るなぁ。」
そっと重なる三成の手を握る。
こんな可愛いやつ相手なんだ、ついつい調子に乗ってしまうも仕方ないだろう。
「なまえさまっ…?」
「三成、」
「は、はい…!」
「遠慮しなくていい。なんでも言ってごらん。」
じっと三成の目を見つめる。いつもより血色のいい三成の頬に手を添えると、三成の喉がごくりと鳴った。
「あ、あの……なまえ様…!」
「なんだ?」
絞り出すような声で三成が呟く。
「…では……どうか、お側に…」
「お側に?」
「…一生、お側に、おいてくださいっ…!」
かあぁっと赤く染まった三成はそう言った。目はもう真っ赤で今にも涙がこぼれ落ちそうだし、先ほどより幾分か温かくなった手は小さく震えている。
真っ直ぐに俺を見る三成の瞳にあるのは、羞恥と期待と恐怖。
かわいらしいことだ。
「三成、」
「は、はいっ」
「俺でいいんだな?」
「なまえさまが、いいです…!」
「…よし。」
今日だけなんでも許してあげる
(なんか《永遠にお願いかなえて》と同じくらいずるい願いな気がしなくもないな)
(…なまえさま…?)
(あぁ、いや。これで永久にお前は俺の側近な)
(は、はい!なまえ様!)((…………半兵衛に怒られるかな。))
半兵衛に報告しました。
「と、言うわけで三成を側近にもらい受けたい。」
「……それじゃあ君への褒美になってしまうじゃないか。」
「だって三成がそれで良いってよ。」
「……………はぁ。仕方ないね……。」
「お、話が早いな。」
「君を行かせたのが間違いだったかな…」
「まぁ願いかなえてやれるんだからいいじゃん。」
「……………はぁ。」
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