その恋物語に終演はなく、

小難しい表情で白い答案用紙を睨むなまえ。
その様子を見ていた臨也は笑いそうになるのを何とか耐え悪戦苦闘している問題を聞くために近寄った。



「さて、今度はどこでつまづいてるのかな?」

「うぅ…折原先生ぇ…」

「ほらほら、情けない声出してないで俺がちゃんと教えてあげるからどこがわからないの?」

「…問7」



そう答えた彼に臨也は用紙の問題を目で追う
その様子を黙って見ているなまえは臨也からの返事をただじっと待った。



「あぁ、ここは今までの数式とはちょっとやり方が違うんだよ」

「えっ」



驚いて声を漏らしたなまえに臨也は優しく笑いかけるとなまえの手に握られていたペンを奪い余白に解説を加えながら式を書き始めた。

それを真剣に見つめるなまえ



「…と、このやり方で解いてごらん」

「はい」



臨也に教えてもらった解き方で次々と問題を解いていくなまえ
先程とは違いペンは止まることなく次々と問題をうめられていく



数分後。


「終わったー!」

「お疲れ様」



盛大に伸びをして机にへばりつくなまえに臨也は一通り用紙をチェックしてから労いの言葉をかけた。



「…先生」

「どうしたの?」

「ごめんね俺、頭悪いから折原先生いつも俺なんかの補修に付き合わせて…」

「なに言ってるのさ寧ろ俺は…」



困ったふうにへにゃりと笑うなまえに臨也は思わず心のなかで思っていたあることを言いそうになって慌てて口を紡ぐ

それに気付かなかったのかなまえは言葉を続けた。



「知っての通り俺すごく頭悪いでしょ?だから他の先生には良く何でこんな簡単な問題もわからないんだって怒鳴られたりもした」

「……」

「家で勉強してないわけじゃないよ?ただ一人で勉強しても良くわかんなくて授業も追いつけなくて…」

「……」

「でも折原先生は俺のわからないところも優しく教えてくれるし、俺が答えを解くまで何回も丁寧に教えてくれる」

「……」

「えっと、つまり何が言いたいかっていうと…ありがとうって言いたかったんです!」

「…っ」



教室の窓から射し込む夕陽に照らされたなまえのその嬉しそうに笑った笑顔に臨也は自分の顔が夕陽によるものではない赤みを帯びたのを感じて手で顔を隠した。



「(もう…何あれ反則でしょ…!)」

「先生?」

『…俺はなまえのこと一度も迷惑だなんて思ってないよ』

「え?先生なんて言ってるの?」



突然ロシア語で喋りだした臨也になまえは聞き返すが臨也は構わず続ける。



『寧ろなまえと今みたいに二人っきりで居られるんなら君は一生頭悪いままでいてほしいくらいだね』

「何言ってるのかわかんないよー!」

『…好きだよ』



我ながら卑怯なやり方だと思ったが、臨也は自分のなかから次々と溢れてくる想いを口にした。



『はじめて補修をしたときなまえが真剣に俺の説明を聞いてたあの時からずっと』

「…日本語で話してぇ」

『好きだよなまえ。ううん、愛してる』

「泣いてもいいですか…?」



一向に戻す気が無い臨也に泣きそうになるなまえ

すると臨也はちょっと照れくさそうに笑って一言。



「好きだよなまえ」

「えっ、折原先生?」

「臨也って呼んで」

「え!えっと…臨也先生?」

「違う呼び捨てで」

「ええ!?な、どうしたんですか!」

「いいから」

突然のことに慌てふためくなまえに臨也は面白そうに笑って見つめるとやがて決心が着いたのかなまえは臨也のほうを向いて



「…臨也」



その一言に嬉しそうに笑った臨也はなまえに近づくと耳元で小さく囁いた。




「俺と一緒に禁断の恋をしよう」

『…よろこんで』



なまえの口から綺麗なロシア語が紡がれた。








END
‐‐‐‐‐
企画呼吸様に提出。



長くてすみません…。
素敵な企画でした。また機会があれば参加させてください!では、失礼します。


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