「うぁあ…お、重い」
放課後、たまたまあった直ちゃん先生に大量の資料運びを頼まれた。
正直嫌だったけど、小さいもの同士助け合おうぜ、と言われてしまったからにはやるしかないではないか!
でもさー直ちゃん先生、私がいたいけな少女だということ知ってる?
「はぁ…頑張ろ」
全て持つと資料が顎に届く程の量をふらふらとしながらも目的地に届けようとしていたが。
「うっ…」
やってしまった。
言葉をのせた物語りは空を舞い、また物語りを紡いでいく…。
詩的に言ってみるとかっこいいけどね、つまりは資料をぶちまけたと、そういうことなんだよ。
さっさと集めて終わらせてしまおうと考えていると声をかけられた。
きっと資料が邪魔で廊下を通れないのだ。
「今、よけますからー」
あぁ、人様に迷惑かけちまった。
これも直ちゃん先生のせいだ!
あとで、嫌がらせしてやろー。
急いでかき集めたが、さっきと比べて量が少ない気がする。
「手伝いますよ」
上を向けば、聖母マリアが。
わーわー、すっごく美人さんだ。
胸に飛び込みたくなる。
「あ、ありがとうございます」
そうお礼を言うと、どんな有名な画家にも描けない笑顔で素敵に首をかしげた。
「お礼を言われるようなことはしていないのですが…」
ずっきゅーん
中司月和はダメージを5000くらった。
な、何なんですか……?!
ちょ、紳士すぎる。
「……名前をお訊きしてもよろしいでしょうか?」
「青空颯斗と申します、中司月和さんでよろしかったでしょうか?」
にっこりと微笑む聖母さま。
首が契れそうなほど上下に動かすと、クスッとまた違う笑みをみせてくれた。
「面白い方ですね…会長が欲しがる訳だ…」
「どうかしましたか、青空くん?」
「あ、いえ。なんでもありません」
ん?独り言、といったところなのか?
「ところで、これはどこまで…?」
あ。
雑談をしていたが、今までずっと資料をもたせていたではないか!
顔を青くしていると「あなたもではないですか」と突っ込まれた。
記念すべき、青空くんからの初突っ込み。
覚えとこー。
「資料室までなんですけど、遠いので私やりますよ」
時計をみればもう遅い時間。
「いえ、手伝わせていただきます。あと、送っていきますよ」
暗いですし、と有無を言わせぬように微笑まれて、まだ抵抗感はあったものの本当に暗い中一人で帰るのは怖かったので甘えさせて貰うことにした。
「ありがとうございます…!」
「ま、はやく運んでしまいましょうか」
彼は私の腕からごく自然に資料を半分ほど自分の腕へとのせてから歩き出した。
なんて、いい人…。
颯斗君のイケメン行為にトキメキつつ私も後を追いかける。
外はもう真っ暗で、でも、真っ黒ではなくて。
あざやかな蒼を混ぜたような美しい色に、今日は天体観測をしようと思った。