この学園にいる女子生徒はかなり少ないらしい。
それは、聞かされていたことだけど…。
やっぱり不安だなぁ…。
「転校生を紹介するぞ!なんと貴重な女子生徒だ。仲良くしてやれなー!!」
転校生、という言葉にざわざわっと騒がしくなる。
そして、女子と先生が発した途端、教室は騒がしいどころの騒ぎではなくなった。
だせよっ!!可愛いんですかー?!!などなど…。
つか、暴言まで聞こえてきたよう?!
もう、このクラスがわからないなっ!!
「「「だーせっ、だーせっ、だーせっ!」」」
あり得ないところで発揮された団結力!意味がわからないっ!
とりあえず入った方がいいよね?
あー、帰りたい!
涙目になりつつ覚悟をきめた。
「こ、こんにちは…」
みんなの視線がいっきに私のものになる。
……こう書けばなんだかスターにでもなった気分になれるかもしれないが、実際はかなり恐いだけです。
とてつもなく大きな恐怖感。うん。かーえろっ♪
「あ、ほんと、だ…」
と思うだけにしてやめよう。
今この瞬間から家に帰りたいなんて台詞は口にしません!
あの髪の長い女の子。
ずーっとこっちをみて、優しげに微笑んでいる。
その笑顔にふれた途端、ふわっとした雰囲気に包まれて頑張ろうかな?なんて思えてきちゃって…。
つまり、月よりも輝いていたってことです。
「………よし…っ!」
ぎゅっと手を強く握って気合いをいれる。
いける。私ならできる……!
「中司月和です。これからよろしくお願いしましゅっ」
……………………………。
だらだらダラダラダラダラ。
あれっ?おかしいなぁ〜汗が止まんないや!
涙目で先生に訴えかけると世話役として、この世の天使、夜久さんを任命した。
そういう意味じゃないんだけど。
『(…めちゃくちゃ可愛いが…めちゃくちゃ心配だ……)』
よくやった直獅先生、とクラスの男子がガッツポーズしていたのはなぜだろう?
「あのね、苗字で呼ぶの大変だから、その……」
名前で呼んで、そう夜久さん。じゃなくて月ちゃんに言われました。
うん。いいよ。そんな上目遣い…誰も断れませんよ!
正直、嬉しいしね!!
「んじゃ、俺らのことも名前で。よろしく、月和」
「え、あ、うん?」
勢いで承諾してしまったが、いったいこの人方はどなたですかね?!
「俺は東月錫也。で、こいつは…」
「七海哉太。よろしく」
「こちらこそ」
「僕は土萌羊。よろしくね、月和」
うわあ、みんな個性的だな…。
しかも、美形。
…………銀髪をのぞいてね。
「よろしく。月ちゃん、錫也、哉太、羊!」
「「「よく出来ました!」」」
「ふふっよろしくね月和ちゃん」
そのあとクラスメイトに中司って呼びづらいから、呼び捨てでいいよね、俺らのこともそれでいいから!と無理矢理決められた。
疑問形ですらなかったよね、質問が。
よしよしいいこだねーと囲まれてなで回されたのが恥ずかしくて、仕返しに舌を出してべーっとしてやった。
「どうだーっ」
ふんぞり返って満足していると
「か、可愛い!」
むぎゅーっとさらに強く月ちゃんに抱き締められて、嬉しかったけど窒息しそうになったのは内緒。
なんで抱き締められたかはわからないけど。
………聞いてはいけない気がする。
なんだかこの学園に入ってよかった、と奈坏にぃに言いたくなった。