あ、今日は部活があるんだった。
直ちゃん先生に背中を押されて弓道部に入ってみたものの…まだまだ慣れない。
でも、月ちゃんいたから頑張ろうと思う。
「あ、月和先輩じゃないですか」
某ファミレスで有名なイケメンボイスが聞こえてきた。
この声はまさか…
「梓くん…?」
「覚えててくれましたか!」
嬉しいです、と素敵なスマイルをふりまくぱっつん。
「……今、僕のことぱっつんって言いました?」
素敵なスマイルが凍りついている。
笑顔が恐い。
「や、あの間接技はやめてください!わ、私これでも少女なんで…っ」
「先輩?何のことかさっぱりわからないのですが」
「いや、ミジンコじゃありませ、ん!」
何か遠くから小さいという単語が聞こえたからとりあえず、それ言ったやつのをはさみで切ってやった。
「……ふぅ、任務完了」
「先輩、睨んでどうかしましたか?」
「梓くんの仲間を増やしただけさ☆」
「…………………………」
え、ナンデハサミヲモッテルノカナ?
そして、どうしてこっちにクルノ?
高笑いがめちゃくちゃ怖い。
「先輩ト僕モ同ジクシマショ♪」
ヴィーン、ヴィイイーン、うぃいぃん。
「なんの音ーっ?!ごめんなさいぃ!」
ハサミよりもはるかに凶悪なブツを持って追いかけてくる梓くん。
「あひゃひゃひゃ!あひゃひゃひっ♪」
私の必死の抵抗も虚しく終わり、梓くんにツカマッタ。
「アー、先輩ミィーツケタ♪」
いやぁあぁあああっ!
私の前髪がっ…
「ぱっつんに……っ」ガバッと机から顔をあげる。
んん?
私、今まで何を…?
「月和先輩、はやく道場行かないと…」
あれ、梓くん?
「ずーっと居眠りしてたみたいですよ、先輩」
時計をみると、部活の始まる時間はとうに過ぎていた。
わ、急いで着替えなきゃ…。
あれ?
私、何カ忘レテル……?
「あ、あ、あ、私の前髪ーっっ!!」
慌てて確認すると、しっかりいつもの場所にあった。
「よかった…!ぱっつんにならなくて!」
安心した。
今回の話は夢落ちだったんだあ。
思わず安堵の息がもれる。
「………先輩、今なんて?」
「ぱっつんだけはやだ!」
「あはははっ面白いなぁ!……先輩、泣かしますよ?」
次言ったら容赦なく取りかかります、そう釘を刺される。
何に?とは聞けなかった。
梓くんのみたこともない形相に怯えつつ必死に頷きを返した。
「う、うん。わかったよ、ぱっつん!」
「……………わざとですか?」
な、何がだろ?
梓くん怖いよう……!
「怖いよ、ぱっつん!」
「絶対泣かす」
キャラ崩壊してる、いやあぁぁあぁあああっっ!
た、たすけてえぇえぇええっっ!!