102:耐熱防炎スキルは


耐熱防炎スキルはスキル自体が保護膜みたいになっていて、身体の表面を覆っている感じだから、その保護膜に穴が開くとそこだけ燃えたり溶けたりしちゃう。



耐熱防炎スキルは常駐型スキル。その日の体調によって保護膜の濃度が変わったりする。体調を崩してしまうと、保護膜が完全に全身を覆わなかったり、保護膜自体が薄くなってしまう。以前は全然熱く感じなかった炎攻撃が熱く感じたり、最悪火傷を負ってしまう。



物語終盤になってくると、免疫力が低下しているだろうから勿論体調も崩すだろうし、スキルの恩恵をあまり受けられていない状態では、炎攻撃を得意とする魔物から皆を守る事すらできなくて、お荷物だという事を実感してさらに精神的に追い詰めて免疫力低下させて〜を繰り返してそう。
(体内にいるパラサイツのおかげで体温上がっているから、風邪菌とかそういうのには強そうなんだよな。いくら免疫力低下していても、体温高いから菌が侵入した瞬間やられちゃうよね。オズは風邪とかで体調を崩すのではなく、メンタル方面で体調を崩してそうだ。)



寄生が進行しすぎて戦う力がまともに残っていない、戦うと益々寄生が進行して最悪死ぬだろう、っていうのはオズ自身もわかっているから、せめてこのスキルを使って得意な炎攻撃から皆を守る壁になりたかった。でも結局守られる立場になってしまうんだよな。



どうしてそんなに戦闘に参加したいのかっていうと、男なのに守られる立場なんかになりたくないという理由と、後ろで皆を見ているだけで何も出来ないという精神的な疲労に堪えられないという理由。仲間が傷ついていく姿を黙って傍観する事しかできないのは、やはりやる瀬なかった。



あとは迫り来る死への恐怖に堪えられなかったっていうのもあるかな。皆から気を遣われて、守られるという状況が死を連想させるというか。そこまでされる程自分は追い詰められているのかと考えるのが嫌だった。前みたいに普通に接してくれれば死という現実から目を背けやすいからね。



本来なら目を背けてはいけない事なんだけどね。ちゃんと現実と向き合って、いかに自分の余力を温存できるかを真剣に考えないといけなかった。けど、パラサイツに精神的生命力も奪われていたからそんな事考える余裕が無かった。死にたくない死にたくない、だけしか考えられなかった。



死にたくないし、仲間を見捨てる事もしたくない。だからパラサイツの力を借りないで戦闘に参加する事がしばしばあったけど、危なっかしいやら足手まといやらでロイスはかなり苛々しただろうね。ロイス以外のメンバーも苛々したと思う。



普通、良生命力のホストヒューマンは仲間に情を持たない。仲間は自分を守る為の駒でしかないのは事実だからだ。その駒を上手く使って、良生命力のホストヒューマンはなるべくパラサイツの力を使わないようにする。寄生を極力進行させずに精霊の泉まで目指すという事が常識だった。



その常識が出来ていないオズに対して、ロイスは苛々しているんだと思う。もっとオレ達を使えよ、と。自分の身分わかってんのかと。ゴミクズ生命力のホストヒューマンの命なんかより、良生命力のブレイブトラベラーの命の方が重いんだよな。
優しいと死ぬ世界。残酷でないと生きられない世界。



ぶっちゃけ言うと、ゴミクズ生命力だけど王族であるキッドと庶民だけど良生命力のオズとでは、人としての価値はオズの方が上。良生命力のホストヒューマンは言わば人類の生きる希望な訳だから。その生きる希望が勝手に命投げ出すような行為を取ったら怒るのが普通なんだよね。



ロイスはオズの為に怒っているというより、自分の為に怒ってるから相当クズ。オズに死なれたりしたら自分の生きる希望をなくす訳だし?目的達成しないまま勝手に死なれちゃ困るんだわ〜って考えだから…ほんと…ほんとクズだ…。



ツンデレとかではなく、本音。ガチ本音。こんな所で死なれちゃ困るから守ってあげてるだけ。精霊の泉に行って目的達成したら死のうが何しようが好きにしろって思考。でもオズはロイスの本音の部分を知らない。自分を守る為に傷ついて欲しくないから剣を握る訳で…オズも相当アホ。


ロイスの本音に気付いたら、オズは深く傷ついてそりゃもう殴る蹴るの大喧嘩に持ち込むだろう。仲間として信頼していたのに、期待を裏切られたような気がして。そもそもオズが勝手に仲間に対して理想を抱きすぎていた訳であって、ロイスに限らず他のメンバーも思っている事は同じだったと思う。口や態度に出すか出さないかの違い。あとは同情やらなんやら。



ロイスは過激派すぎるんだ…テオやアレタやキッドは口に出したり態度に出したりはしなかったし、もし自分がオズの立場だったらって事も考えて逃げ道もちゃんと作ってあげていたのに。でもロイスは、犠牲になって世界を救えの一本道しか用意してあげなかった。言う事聞かない時は力で捩伏せたりもしたと思う。



一方、イステアは逃げ道しか作らなかった。
皆も少なからずロイスと同じ思考をしていたけど、イステアは違った。心の底から同情してしまって、可哀相だと思って逃げ道を作った。逃げてもいいんだよ誰も責めないよって優しくしてあげたよ。まあ好きだから当然だよね。好きな人を甘やかしたくなるのは当然だけど、これは我が儘になるんだな…。



ロイスと同じ思考を持つと、好きな人に対して死ねって言っているのと同じ事だから…。イステアがオズに対して死ねなんて言えるはずがない。大好きだから。だからイステアは自分の死ぬ運命とかよりも、まずオズを逃がしてあげたいと思っていた。



しかしオズを生かしてあげたいってのはイステアの我が儘になる。ホストヒューマンとブレイブトラベラーの命ではブレイブトラベラーの方が重いけど、世界中の人の命とブレイブトラベラー一人の命だったら当然前者の方が重い訳だから。っていうのは前にも語った気がする。



精神的束縛を受けていた中で、イステアのこの優しさは多分救いになっていたと思う。絶望値カンストして自殺しなかったのはイステアのおかげだ。まあ結局逃げ出したりはしなかったけど。皆に申し訳ないってのと、やっぱり自分がやらないと自分も死ぬだろうからっていう理由。



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2014/1/17
 

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