「ノボリが今考えていること、当ててあげよっか」

クダリが発言することはいつも突拍子がない。思考が他人と異なっている。その異なっているという点について述べろと言われれば、上げきれるはずもない。
しかし、誰かにとってわたくしの異なるが異なるではないのかもしれない。そう考えると、わたくしはわがままを垂れた変人扱いをされるかもしれない。それだから、わたくしはクダリに対して決して偏見をもったりもせず、クダリをクダリとして頭の中で自己処理することに決めているのだ。

「今日は、急にどうされたのですか」
「んー僕はねえ、聴いちゃったんだよ」

クダリはうれしそうにきゃっきゃと軽やかに石畳の上を走り回る。

「何を聴いたのでしょう」
「なんでもね、双子は意志の疎通ができるらしいんだよ!」
「ふうむ、それは興味深いおはなしですね」

考える仕草をすれば、クダリはまたうれしそうにわたくしの周りを駆け回ってジャンプした。ひらりと長いコートがクダリと同じように踊っていた。
自身もそのようなはなしをよく耳にしたことがある。しかし、ここで折角クダリが持ってきてくれたおはなしを潰してしまうのもなんだと思ってしまった。知っているの一言で済ますのは簡単だ。それで済まそうと思うほど、わたくしはクダリのはなしが嫌いでなかった。寧ろ、きらきらと輝くような別世界から仕入れてきたようにはなしをするクダリが好きだった。クダリをまぶしいと思ってしまうほどに、わたくしは沢山のことを曲がりながら知りすぎた。
幼い頃に手にしたあの感情は0に近い。新しく接するものにただただ無情な興味を示し、肌で未知を感じる。
それがまだできるクダリがうらやましかった。

「じゃあ、当てるよ」

クダリはそう言うと、んーと唸りながら考えるポーズで膠着する。わたくしと同じはずなのに、同じでないあなたが憎いと思ってしまう。同じであるべきあなたが同じでないのは可笑しいと感じてしまう。ああ、ごめんなさい。

「クダリ。わたくしが今からあなたが今考えていることを当てて見せます」
「本当?」
「ええ、勿論です。わたくしがうそをついたことが今までにありますか」
「じゃあ本当だ!」

自身の胸に手を当てて考えるまでもなく、答えは決まっていた。矢張りあなたはわたくしと同じだ。クダリはノボリであり、ノボリはクダリであらねばならない。そうでもしなければ死んでやる。わたくしばかり、わたくしばかり。
にこりと丁寧な顔を貼り付けて、クダリに向き直って一声。






「わたくしのことでしょう?」

これはただのわたくしのわがままな錯覚なのである。



絵本はもう閉じてしまおう
110120
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