「最近、僕は死んでしまうんじゃないかなあと思うんだけど」

「そうかあ?お前はなにがあっても生き抜いてそうだけど。人を出し抜くのが誰よりもうまくて、器用じゃねえか」

「出し抜くって人が悪いみたいだ」

レッドは相変わらず無表情で空を仰いだ。こいつの目にはなにが映っているのだろうか。常人には理解できないのだろうと常々思う。いつもの場所でと前回約束を交わしてから、バトルをし終えたのが今日に当たる。万年半袖のおおばかやろうが冬の寒さで息絶えないのだから、死ぬなぞてんで先の話である。寧ろ、レッドからそんな言葉がでてくるとは意外だった。

「ねえ、死んだらどこにいくのかな。天国なんてないよね。あったら神様はうそつきだ。前世で人間を幸せにすればいいのに、わざわざこの世からいなくなって処置を取ろうだなんて。なに考えているんだろう」

「お前に思考を問われちゃ、神様も世話ねえな」

「うん、僕もそう思う」

こくりと頷いたレッドのそばによってグリーンは地面にあぐらをかいた。ズボンはもちろん防水性のため、雪解け水にも負けない。一方レッドのズボンはというとなんの加工もなしのただの布切れに近かった。籠もるのなら風邪をひくから防水にしてくれと何度も頼みに行った日々が頭の中に駆け巡る。
きっとレッドが溶けかけた雪の上に腰をかけたらびちょびちょになって下山せざる負えない。自らが挑戦者に負かされるまで自宅には足をのばさないと決めたらしくなにかあったらグリーンの家に駆け込もうとする。

「よいしょ、と」

さらにその頑迷さに拍車がかかるような行動は避けて欲しい。もっと言わせていただけるのならば、早く背中から退いて欲しい。

「俺の背中が悲鳴をあげてるぞ」

「イスみたいだなあって思ったから。違う?」

「断じて言う、それは絶大なる不正解だ」

「ふーん」

さらに体重を掛けてきて、両足を地からはなして両手を使ってバランスをとるレッドを最早憐憫の視線を向けて見つめるグリーンはさながら親のようだった。

「堕落するな。若者は自らの足を地面にぴたりとくっつけて生きろ」

「死んだら地面に足をつけなくてもいいの?」

まだバランスを取り続ける所作をいつまで続けるつもりか。連日ジムリーダーとデスクワークを兼ねて疲れ果てた節々が限界を伝えるかのように、背骨からグリーンは崩れた。
額が地面と突き合わせになり、頭へ脳へと冷たさが伝わり肩が揺れた。

「痛えなあ・・・!お前自由すぎるぞ」

「グリーンは僕が死んだら悲しい?神様は僕を幸せにしてくれるかなあ」

「悲しくなんかねえよ。お前が死ぬわけない。だから悲しいとかなんもない。神様はお前を構ってやるほど暇じゃないと思う」

「もしも今この崖から飛び降りたらグリーンも一緒に飛び降りてくれる?」

「いやだね。お前には、生きて生きて負けて早くお前の母さんに顔を見せてあげなくちゃならないからな。死んでもらっちゃ困る」

「僕は悲しいんだ。グリーンが死んだら僕も死んだようなものなんだ」

「分かった。分かったから退けって」

グリーンがあぐらをかくのを止めて立ち上がった。ぱんぱんと溶けかけた雪をはらう。

「最後はきっとお前と一緒だ」

やっとレッドは満足そうな顔をした。






Ι



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レッドさんは無神論者だと思っています。多分ミナキは有神論者。グリーンはわりと気分。(100904)
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