※しりきれとんぼ
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久々にレッドが山から降りてきた。挑戦者はなかなか来るはずもなく、そもそも頂点と呼ばれる彼に近づこう物好きなど滅多にいない。生半可な覚悟で挑めば、一発ケーオーは確実だった。

「バトル・・・したいんだけど」

「俺は忙しいの。ヒビキにでも構ってもらえって。お前が呼べばあいつしっぽ振ってくるぞ」

番号も交換したわけだから、グリーンのポケギアを使えばそれで終わりだ。

「うーん・・・、この前負かしたばかりだから。また僕に挑むために、暫く赤毛の子と山に籠もるって言ってたし・・・やる気を削ぐ真似はしたくない」

「そりゃ楽しみだ」

「なにが」

「お前が負かされる日が刻々と近づいてることが、だよ」

「なにそれ」

一階のリビングでのんびりと体を伸ばしているレッドは訝しげな顔をした。まだ彼は負けるつもりがないらしい。

「グリーン。暇だ」

「暇をつぶす方法を見つけるのも最強のトレーナーの条件だ。だから邪魔をするな、邪魔を」

「僕はまだ降りるつもりはないから」

「へーへー、最強トレーナーさんは随分と強気ですこと」

「そんなこという口は、僕に食べられればいいんだ」

そう言ってレッドは体を起こして、作業中であるグリーンの背中にのし掛かった。グリーンは、研究所の資料をまとめるように言われているようでめずらしくめがねを掛けてペンを走らせていた。目を右から左へと機械的に動かしている行為が、のし掛かる程度で強制終了させられる訳がなかった。伊達にシロガネヤマに大荷物を抱えて足を運んでいるわけではないのだ。自然と鍛えられていたグリーンの肩は線が細いように見えて、はるかにレッドよりもたくましかった。

「いつ終わるの」

「分からない。だから、ヒビキを呼べって。コトネでもいいぞ。おれは毎日寝ずに作業してんだから、労れっての」

「・・・コトネもヒビキたちについていった」

「あいつらこういう時ばっかり役に立たねえんだよなあ。いつもは無関係な日にジムにきて仕掛けだけ楽しんで帰ってくしよ」

と、グリーンはため息を尽き、めがねを外して伸びをする。
Tシャツ一枚で過ごすだけで、マサラの夏は涼しい。夏になれば溶けるかと思っていたシロガネヤマの雪は依然として変わらなかった。言うなれば、多少溶けるというほどであって山は白さを保ち続けている。
極寒でないにしろ、あそこで過ごすなど遠慮願いたい。

「で、レッドさん。肩重いんですけど」

「んー」

ざらり、とした感触がした。下から上に駆け上がる悪寒はなんなのか。べろり。ひと舐めすれば、濡れて光ったグリーンの首筋は生暖かかった。レッドはグリーンの首筋を丁寧に下から上へと舐めあげる。
続く唾液の光る線は暫くすると輝きを失う。その代わりというように、新たに透明な筋を足していく。舐めあげる仕草には必死さはないが、グリーンが攪拌されるには十分だった。
さらにその頑迷さが際立ちはじめ、首筋からうなじへそれから右肩へとそれは透明な跡を引きながら移動した。
肩半分シャツがずらされたので、もう片側がぎちぎちと音を立てた。首もとが緩いとはいえ、肩から破られてはたまらないという風にグリーンはレッドにやめろ、と制した。

「いやだ。僕の暇つぶしなんだけど」

聡明な態度ではない。グリーンはすぐさまこれらの行為を止めて欲しかった。自分が保たないと思っていたのは確かだった。しかし、ここで音を上げてしまっては意味がない。
レッドに首を舐め回された程度でああだこうだというほど自分の器は小さくないし、動じもしないという変な対抗心が芽生え始めていた。

「ねえグリーン、」

いいつつも動きを止めないレッドの舌先は、熱かった。本当の夏の暑さにも似たそれは、どんな色をしているのだろうと。グリーンはめがねを掛け、何事もなかったかのようにペンを再び手に取った。

「こっち向いて」

条件反射のようなものだった。鼓膜は機能が確かならば震えたし、レッドの声が伝わった。
だったら、後ろを振り向くしかないだろう。声がする方へ、顔だけ向ける。

「なんだ、」

最後までしゃべらせてはくれなかった。半開きの口をこじ開けて舌を滑り込ましたレッドの、いままでに見せなかった必死そうでいて扇状的な顔を間近に移したグリーンの瞳は明らかに怯んでいた。掛けられていためがねはレッドの手で器用に上げられた。
絡ませる舌は、右から左へと蹂躙し能動的な動きだった。誘うように絡む熱は、とろけそうに甘い。

「はあ、あ、」

息をするのを忘れていたのか、それとも肺活量が足りずだらしなくなった体のせいなのか、レッドは息を乱れさせ、めがねを元の位置に戻す。グリーンはてんで平気なようすで、口を離し短い呼吸を繰り返すそれを再び今度はこちらから塞いだ。無理に顔を近づけたせいで、レッドの鼻に押されめがねが上にあがる。レッドへの変な対抗心が、妙な気分に変化した。

「ん、ん、ふあ」

かしゃん、かしゃんとぶつかる音が重なりながら深く舌を絡ませる。レッドのように生半可に舌を絡ませず、さらに奥へ奥へとグリーンは自らの舌を押し進めて、相手の呼吸を奪った。唾液が口内に溜まりはじめると、くちゅくちゅとした水音が鼓膜を揺さぶった。唾液が溜まり息をするにもしにくいレッドの舌を吸い上げる。

「はあ、ん、んああ」

「おしおきだっての、ん」

角度を代えて、優しく優しく重ね合わせたそれは潤色が加わっていた。口を離す前に舌で仕掛け人である唇を舐めると、息はもうできるはずだが息切れしたままだった。レッドはなんとか息を整えようと肩を上下させる。

「大丈夫か」

「おしおき、とか、ぐりーん、きもい」

「うるせえ。あの資料明日までにまとめなきゃなんねえんだぞ」

耳をくすぶるとレッドは目を閉じて、身をよじった。手で払いのけようと必死で振るが、グリーンにうまくまるめこまれる。それからがたん、大きな音がした。視界が反転し、目に映るものは天井と、それから倒した張本人のいじわるそうな顔だった。
頭を軽く打ったようだ。じんじんと痛みが広がりはじめて脳が麻痺する感覚を味わう。思わぬ床の冷たさに心地よさを感じた。

「俺がいい暇つぶしを提案してやろうか」

グリーンは、レッドの両腕を床に縫い付けていた。変に狼狽したようすも見せない赤色の瞳を揺らめかせたい。特に、自分の時間を返上してまで付き合ってやるのだから、もちろんなにがなんでも提案を呑み込んでもらうつもりだ。

「何回イけるか挑戦するか」

「は・・・?あっ」

「胸いじっただけでイけるかもなあ」

胸の飾りを指でピンと弾くと苦しそうに声を高く上げた。

「う、あん、は」

「何回抜かずにヤっていい?」

やっと深紅の瞳が揺らめいた。抵抗しようと身をよじる姿もそそられる。息ができなくなるほど、今はキスをしてやろう。

「な、最高の暇つぶしだろ?」





夏の死骸






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まったくえろくならなかったですすみません。喘ぎだけで乗り越えすぎた。(100908)
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