D.gray-man Novel | ナノ



D-gray.man


まぁ、所謂『一目惚れ』ってやつさ。
それがこんなものなのかは知らないけど…

オレはその彼女に釘付けになる。
軽いウエーブの茶髪に黄色を基調としたドレスがとても似合っている。

「まあ! お父様、これは…」
「そうなのだ。
 どうぞ、軍人様、我が城においでください」

驚いた顔も素敵さぁvV
って、そんなこと思っている場合じゃないさ。

「おじいさん…」

一応、悲しまないと。

「医療施設が城の中にあるので、早く行きましょう!」

その、オレが一目惚れした彼女も言う。

「では、お言葉に甘えさせてもら…います」

馬車にジジイを担ぎ上げ、乗り込む。
流石、お金持ち。
馬車の中はとても柔らかいソファに金の装飾。

「すいませんが、お名前は?」

王が聞いてきた。

「ボクはディックと言います。
 そして、こちらがボクのおじいさんのブックマンです」

ジジイにはブックマン以外の名前はない。
付けなかった、っていうのが本音だけど、さ。

「素敵な名前ですわね」
「貴女は何と言うお名前なんですか?」
「ななこと申します」
「私はこの国の国王です」

てめぇには聞いてないっての。
ななこっていうんさ〜…
この王、このこにぴったりすぎる名前つけやがって、憎いさっ(←何故? by管理人)


この国で一番大きな建物、さっきまで丘の上でオレ等が見ていた城の中に入る。
盗み見するより、中から見た方が立派さぁ…
ジジイは着くとすぐに医療室につれていかれた。
多分、ジジイは生きている。
然程心配はしていない。

さ、今のうちに羽を伸ばすさー…

「ななこさん、王さん、ボクのおじいさんが回復するまで、ここの居させてもらってもいいですか?」
「どうぞ、こちらの不備なのですから。
 ななこ、ディック様を部屋に案内して差し上げろ」
「分かりましたわ」

ななこが頷き、歩き出す。
オレもななこの後について歩く。

階段を上ったり、長い廊下の角を曲がったり…
普通の人間だったら、覚えきれないだろう。
しかし、オレは違う。ブックマンだ。

このくらい完璧に覚えられる。

「ディック様、覚えられますか?」
「ああ、大丈夫ですよ。
 それより、様はやめてくださいませんか。
 ボクはそれほど大した人間ではないので」
「何を仰るんですか。
 ディック様はディック様ですわ。
 おじい様、家族をこんなに大切にされる方は初めて見ました」
「初めて?」
「私はこの家で育って、16年。
 強くお父様の愛情を感じたことはありません。
 政略結婚の道具にされそうになったこともあります」

因みに、政略結婚の相手国が戦争で負け、その結婚はなしになったんさ。
オレ、きちんと調べてるから。

「…大変なのですね……」

畜生、こんな言葉しかオレは彼女に掛けられないのか!!?

「いいんです、慣れてますので」

慣れてる、か。
彼女の求めている愛情、を避けているオレ等は何なのだろう…

「ななこさん…」
「あ、ではこうしましょう。
 わたしも'様'はやめるので、ディックも呼び捨てにして下さいよ」
「分かっ…分かりました、ななこ」
「敬語もいいですよ」
「いいんさ? 令嬢なのに…」
「私、同年代の友達とかとあまり接した事がなくて、嬉しいんですよ、ディック!」

満面の笑顔になるななこ。
つられてオレも笑顔になる。


ずっと彼女の笑顔を見たい、と思ったのも束の間。
ブックマンには許されなかった。






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