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船内を走ってきた私は女部屋の前で立ち止まると大きく息をついた。もう自分バカとしかいいようがない。何であんなことをしてしまったのか。変態的な意味でフランキーと同レベだと思われたらどうしよう。っていうか、今ので私の気持ちサンジくんにバレたんじゃないだろうか!?いや寧ろバレない方がおかしいくらいだ。そう考えると益々顔が熱くなる。両手で顔を抑えてドアに寄り掛かるとそのままヘナヘナとしゃがみこむ。




『…はぁ、もうヤダ…ッ!?』




ため息をつくと同時に急に誰かに後ろから抱き竦められた。誰かといってもこの船には自分とサンジ以外に人はいないし、誰かが帰ってくるには時間が早過ぎるので、彼以外には有り得ないのだが思いも寄らない出来事に頭がついていかない。




「リィキちゃん…」

『ッ!?』




耳元で囁かれる言葉にビクッと体が震える。




「さっきのアレはおれの都合よく解釈してもいいのかな?」

『…え……んん!!?』




サンジの言ったことの意味を理解するよりも早くリィキはドアに身体を押し付けられ、唇を塞がれた。
座り込んだ状態でサンジが覆いかぶさっているため、力が入らない上にこの状況にもう何も考えられない。

いつも女の人にメロメロになってるくせに、こんな風に手を出しているところなんて見たことがなかったから、どうしていいか分からなくて、私はされるがままにただ深くなっていくキスを受け入れるしかなかった。




『ん…ふ、ぁ…サンジ、くんっ、苦…しッ』




いい加減酸素が足りなくて耐えられなくなった私は何も考えられなくなりそうな頭を叱咤し、やっとの思いでサンジくんのスーツをきゅっと掴んだ。ゆっくり唇を離したサンジくんと、至近距離で見つめ合う。虚ろな瞳で目で見つめ返す私をサンジくんはどう思っただろう。




『サンジくん…?』

「ッご、ごめん!!」

『え?』




先に沈黙に耐えられなくなったのはやっぱり私の方で、小さな声で呼び掛けるとサンジくんはハッとしたように飛び退いた。何かと思えば急に謝られてますます混乱する。




「いきなり、こんな…」




衝動的とも言える行動にサンジくん自身も狼狽えているようだった。さっきの私と、一緒なのかな。だったら嬉しい。




「イヤだったよね」

『イヤじゃないよ』

「え、」

『ぜ、全然イヤじゃなかった…!!』




ここまできたらもう何も隠す必要なんてない気がして、私は早口にまくしたてる。




『わ、私の方こそごめんなさい!!あんなことして、変な奴だって思ったでしょ!?だ、だから気にしないで。今のだって全然大丈夫!!だって、私…私!!サンジくんのことが…ッ』




好き、と言おうとしたら強い力で抱き寄せられて言葉に詰まる。




「…その先はおれに言わせてくれないかい?」

『サンジくん…』




抱き竦められた耳元で静かに言葉を紡ぐ彼に私は黙って頷いた。それを確認するとサンジくんはゆっくりと体を離して私の目を覗き込む。私もさっきとは違うしっかりとした視線を彼に向けた。




「好きだ」

『私も。ずっと、ずっと好きだった…ッ!!!!』




霞む視界を誤魔化すようにサンジくんに飛び付いてその胸元に顔を埋めた。優しく抱き返してくれたサンジくんに今度こそ暖かいものが頬を伝って私は嬉しさを噛み締めた。















バレンタインじゃないけど
((チョコレートで恋が実った))


NEXTあとがき





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