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闇を纏いやってきては、暗がりで行われる惨害。誰にも姿を見せず、しかし蝶のように鮮やかに。




―…




それが私の裏の顔。
私は復讐者。

昼間は控え目に目立たずに人との関わりを極力避けひっそりと暮らし、平凡を愛する並々女子高生を演じる。その他大勢に紛れて姿を眩まし、夜になると仕事に向かう。依頼人に変わってその人の望む復讐を果たすのが私の役目。

様々な依頼を受けて求めるのは情報。誰かの復讐が私の探している人物に繋がる事を期待して。その時のために腕を磨いて孤独に耐えて今までずっとひとりで闘ってきた。そうまでして私を動かすのは憎しみと怒り。私から大切な人たちを、穏やかな日常を奪ったヤツらを私は決して許さない。この手で必ず私も自分の復讐を果たしてみせる。












『…よし』


鏡を見て自分の姿をチェックする。今いるのはお屋敷内にある更衣室。沢田さんが用意してくれたパーティー用ドレスに着替え、準備は万端だ。

黒ずくめの人たちに追い掛けられたあの日も何も考えずにただ路地裏を歩いていたわけじゃない。依頼があったために相手の偵察に行っていたのだ。まさか昼間からあんなに分かりやすく取り引きしているとは思わなかったから見つかったのは完全に私の失態だったけれど。でも、おかげでボンゴレという大規模マフィアにスカウトされて仕事が出来ることになった。大きなマフィアほど入ってくる情報も多い。

ボンゴレファミリーはマフィアとしては少し異質で、その権力を行使するようなことはなく、ただ自分たちの大切なものを守るための自警団のような役割を担っているらしい。そのためか、無益な殺生を嫌うと聞いているから私は彼らからすればその秩序を乱す悪だ。
いつ排除されてもおかしくはない存在だが、そのリスクを負ってでもこのままもう少し様子を見る価値は十分にある。私は私の利益のために。

近付いてくる気配に深呼吸ひとつで気持ちを切り替えると、私は鏡に映った自分に微笑んだ。




「紗佳ちゃん準備出来た?」

『はぁい』




細身のパーティードレスに身を包み、かけられた声に返事をすると、シャッと更衣室のカーテンを引く。カツカツとヒールを鳴らして前に出るとそれに合わせて少し長めのイヤリングが結って垂らした髪と一緒に揺れる。




『お待たせしました』

「うん、なかなか似合ってるじゃない」

『なかなかってどういう意味ですか沢田さん』




自分の前に立つ彼が、まるで似合うとは思ってなかったような口振りだったことに不満気に口を尖らせると沢田さんは楽しそうに笑って、じゃあ行こうか。と私の背中を押して促す。はぐらかされた気もするが彼につられて私も笑顔で頷いた。

久しぶりに感じる人の暖かさ。思い出した誰かと一緒に過ごす楽しさ。短いけれど共有したこの時間で、過去のトラウマがなくなるわけでも受けた傷が癒えるわけでもないけれど、この人たちと過ごすことで私から欠けたものが少しずつ戻っていくような気がした。


出来ることなら、彼らとずっと一緒にいられたらいいのにな…。










ちょっとシリアス?




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