1 自分は夢を見ていたのだろうか。帰りの支度をしながら昨日あったことをぼんやりと思い出す。あれから一夜明けて普通に高校に通って授業を受けていつもと変わらない一日を過ごしているとそんな風に感じた。 あの後あのすっごいお屋敷でお茶をご馳走になって、ボスの守護者とかいう人たちを紹介された。ボスの右腕だとか豪語する銀髪ヤンキーと爽やか系スポーツマンと熱血ボクサーに牛の角生やした子。 みんな個性派過ぎてワケわかんないところにはワケわかんない奴らが集まるもんなんだなと感心した。 そして最後に沢田さんと同じくらい危険な香りのするあのデコピンしてきた黒スーツの人。ヒットマンとか言ってたけどそれが何かについては深く考えてはいけない気がしてあえて聞かないでおいた。本当は守護者が後二人いるらしいけど昨日は仕事で留守だったみたい。 それで何故かそのまま流されて夕食まで頂いてしまった。何処かの高級レストランのコース料理みたいなヤツ。あの人たちあんなの毎日食べてんのかな。このブルジョアどもめ!! ブ―… ブ―… 『ぅわッ!!!??』 下駄箱から靴を出しながら悪態を付いた瞬間、携帯のバイブが鳴りだして思わず飛び上がってしまった。まさか近くにいるんじゃないかとキョロキョロと辺りを見回す。 『…っと、いけない。電話電話』 つい他の事に気を取られて鳴り続ける携帯をスルーしてしまった。慌ててカバンから取り出して開くと見慣れない番号。 『え…誰だろ?』 出るべきか一瞬迷ったけど取り敢えず通話ボタンを押す。 『も、もしもし?』 「遅ぇ!!もっと早く出ろ!!」 『え!?だ、誰…』 「今何処だ?」 『が、学校ですけ、ど…って切れた!!』 最後まで言い終わらないうちに一方的に電話は切られてしまった。失礼な!!…じゃなくて!!何知らない人に場所教えてんの自分!!バカ!?バカなの!? 取り敢えず早くこの場を立ち去ろうと校門に向かってダッシュ。学校の外に飛び出すと、何処かで見たことのある黒い高級車がキキーッという凄い音を立てて私の目の前で止まった。 『きゃあ!!!??』 「このバカ!!引かれてぇのか!?」 『え!?…あ、獄寺さ…』 「早く乗れ!!」 『わぁッ!!!??』 車から怒鳴りながら降りてきたのは昨日お屋敷で会った銀髪ヤンキーもとい獄寺隼人さんだった。もしかして今の電話も彼からなんじゃないかと思う間もなく首根っこを引っ掴まれて車に放り込まれた。 『な、いきなり何ですか!?』 「十代目がお前に用があるとおっしゃったんだよ!!」 『はぁ?』 っていうか、周りの人が見てるんですけど!?めっちゃガン見してるんですけど!?校門前に堂々と高級車で乗り付けるなんて目立つに決まってる。あぁ、私の今まで築いてきた平凡な日々が…これでもう普通の人には見てもらえないだろうなぁ。 私は昨日のことが夢ではないと実感したとともに後部座席に沈み込んで盛大にため息を吐いた。やっぱりここはもう腹を括っていくしかなさそうだ。 『ところで、何で獄寺さんが私の携帯番号知ってるんですか?』 「十代目が守護者全員に登録させたんだ。お前も登録しとけよ俺の番号」 『…マジでか』 もう突っ込む気も起きませんよ、えぇ。本当に。こういうもんなんですね。 これからは知らない番号でも電話出るようにしなきゃ。 獄寺さんに連れられて再びあの豪邸にやってきた私を迎えたのは何処か楽しそうなリボーンさんだった。車が着くなりニヤニヤしながら近寄ってくる。 「喜べ。早速初仕事だぞ」 『やっぱり!?仕事って…マフィアの!?それ、全然嬉しくありません!!』 私はまだ高校生なのに!!なんてデンジャラスな事をさせようとしてるんだこの大人たちは。 「やぁ、待ってたよ。紗佳ちゃん」 『沢田さん!!仕事って何ですか!?』 「うん、やる気満々で嬉しいよ」 『違います!!命に関わる仕事だったら断る気満々で聞いてるんです!!』 リボーンさんの後からにこやかに出て来た沢田さん。確かに私は彼にスカウトされてここに連れてこられたわけだけど、昨日はここに着いてから一度もそのことについて触れなかった。聞いてもはぐらかされてあやふやのままだったから分からなかったけど、本当に私を連れてきたのは仕事をさせるためだったんだ。 黒ずくめに追いかけられていた私を見てスカウトしようと思ったみたいだけど、スカウト理由がそれなだけに仕事内容はきっと危険なことかもしれない。気を引き締めて沢田さんの言葉を待つ。しかし、次に彼から出た言葉に拍子抜けしてしまった。 「ボンゴレファミリーが主催するパーティーの受付をやってほしいんだ」 『…え?』 パーティー?受付? 私の頭にはてなマークが飛び交う。それって全然マフィアと関係ない気が…。 Back |