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不「ホント、桃の言う通り、不思議な子だね」

河「うん。あんなにテニス出来ないって騒いでたのに…」

乾「もうあれはテニスが出来る、出来ない以前の問題だな」

桃「マジ強すぎ」




華綺のプレーを見ていたR陣が率直な感想を述べる。華綺の意思とは関係無しに動く体はまた、彼女の意思とは関係無しに彼らに不本意な印象を与えていた。




パシッ

ビシッ




そんな事は梅雨知らず、華綺と海堂は激戦を繰り広げていた。激しいラリーの音がコートに響く。




海「…くッ」


スパンッ


『はッ!!!』


ビシッ!!


「15-0」




甘く入った海堂のショットを華綺は見逃さなかった。




海「…チッ」

『…』




順調にポイントを重ねる華綺だが、彼女の中にはモヤモヤとした感情が渦巻き始めていた。

…つまんない。

次のサーブを打ちながら華綺は心の中で呟いた。

今の私はすっごくテニスが強いし、部員としてテニス部に入っても全然余裕でやっていけそう。でも、つまらない。この力はこの世界の私、つまり【凰乃華綺】にインプットされている記憶、いわばデータといってもいいかもしれない。私自身の力じゃない。凄く練習して、いざって時に体が勝手に反応するのとはワケが違う。何も考えなくても体は勝手に動いて…まるで傍観者になったみたい。

何か…気分悪い。だって、これじゃあ、操り人形同然じゃない?




堀「あー!!あの構えは!!」



突然上がった堀尾の声とギャラリーのどよめきで我に返った華綺は海堂を見る。




加「出た!!海堂先輩の十八番…」

『“スネイク”!?』



ザワッ



海「なっ!!?」




カチローの声を遮って叫んだ華綺。



海「…くッ」


スパンッ


『なんだ、違うじゃん』




一瞬の動揺で海堂はスネイクを打つタイミングを逃してしまった。



『やッ!!!』


バシッ


「30-0」




そして、再び華綺がポイントを奪う。




加「…どういうこと?凰乃さんって、今日転校してきたばかりだよね!?」

水「う、うん。でも、何で海堂先輩の技を知ってるんだろう?」

堀「バァーカ。どっかで見たことあるだけに決まってんだろ!!」

不「…それはどうかな?」




1年トリオの会話に不二が口を挟んだ。




堀「あ、不二先輩…」

加「え、どういうことですか?」

不「それだと、もし、あの子が海堂のあの技を知っていたとしても、それが“スネイク”だと知っているのはおかしいってことになるよね?」

堀・加「「?」」

水「…そうか!!海堂先輩のあの技の元は、“バギーホイップ・ショット”からきてるから…」

加「あぁ!!“バギーホイップ・ショット”だとは分かっても…」

堀「成る程!!海堂先輩の技が“スネイク”だとは知らないはずなんだ!!!」

不「当たり」

加「じゃあ、どうして…」

不「…さぁ?」




答えを濁した不二に対して、越前が口を開いた。




越「…不思議ちゃん」

不「越前?」

越「これ、桃先輩が言ったっていうか…あいつが自分で言ってたんスよ」

「「……」」




自ら不思議ちゃんと名乗る人物…。確かに彼女の言動には噛み合わない点が多い。




不思議ちゃん…




彼らの華綺に対する謎は深まるばかりなのであった。




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