3 不「ホント、桃の言う通り、不思議な子だね」 河「うん。あんなにテニス出来ないって騒いでたのに…」 乾「もうあれはテニスが出来る、出来ない以前の問題だな」 桃「マジ強すぎ」 華綺のプレーを見ていたR陣が率直な感想を述べる。華綺の意思とは関係無しに動く体はまた、彼女の意思とは関係無しに彼らに不本意な印象を与えていた。 パシッ ビシッ そんな事は梅雨知らず、華綺と海堂は激戦を繰り広げていた。激しいラリーの音がコートに響く。 海「…くッ」 スパンッ 『はッ!!!』 ビシッ!! 「15-0」 甘く入った海堂のショットを華綺は見逃さなかった。 海「…チッ」 『…』 順調にポイントを重ねる華綺だが、彼女の中にはモヤモヤとした感情が渦巻き始めていた。 …つまんない。 次のサーブを打ちながら華綺は心の中で呟いた。 今の私はすっごくテニスが強いし、部員としてテニス部に入っても全然余裕でやっていけそう。でも、つまらない。この力はこの世界の私、つまり【凰乃華綺】にインプットされている記憶、いわばデータといってもいいかもしれない。私自身の力じゃない。凄く練習して、いざって時に体が勝手に反応するのとはワケが違う。何も考えなくても体は勝手に動いて…まるで傍観者になったみたい。 何か…気分悪い。だって、これじゃあ、操り人形同然じゃない? 堀「あー!!あの構えは!!」 突然上がった堀尾の声とギャラリーのどよめきで我に返った華綺は海堂を見る。 加「出た!!海堂先輩の十八番…」 『“スネイク”!?』 ザワッ 海「なっ!!?」 カチローの声を遮って叫んだ華綺。 海「…くッ」 スパンッ 『なんだ、違うじゃん』 一瞬の動揺で海堂はスネイクを打つタイミングを逃してしまった。 『やッ!!!』 バシッ 「30-0」 そして、再び華綺がポイントを奪う。 加「…どういうこと?凰乃さんって、今日転校してきたばかりだよね!?」 水「う、うん。でも、何で海堂先輩の技を知ってるんだろう?」 堀「バァーカ。どっかで見たことあるだけに決まってんだろ!!」 不「…それはどうかな?」 1年トリオの会話に不二が口を挟んだ。 堀「あ、不二先輩…」 加「え、どういうことですか?」 不「それだと、もし、あの子が海堂のあの技を知っていたとしても、それが“スネイク”だと知っているのはおかしいってことになるよね?」 堀・加「「?」」 水「…そうか!!海堂先輩のあの技の元は、“バギーホイップ・ショット”からきてるから…」 加「あぁ!!“バギーホイップ・ショット”だとは分かっても…」 堀「成る程!!海堂先輩の技が“スネイク”だとは知らないはずなんだ!!!」 不「当たり」 加「じゃあ、どうして…」 不「…さぁ?」 答えを濁した不二に対して、越前が口を開いた。 越「…不思議ちゃん」 不「越前?」 越「これ、桃先輩が言ったっていうか…あいつが自分で言ってたんスよ」 「「……」」 自ら不思議ちゃんと名乗る人物…。確かに彼女の言動には噛み合わない点が多い。 不思議ちゃん… 彼らの華綺に対する謎は深まるばかりなのであった。 Back |