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てんてんてん…

コロコロ……コロ…




シーンと静まり返ったコートに何度か弾んで転がるボールの音が響く。誰もが目を疑った。今、目の前にいる女の子がいとも簡単に海堂からリターンエースを奪ったのだから…。




『…あ、あれ?ひょっとして、リターンエース取っちゃった…?』




声もなくその場に立ち尽くす彼らの耳に入ってきた何とも気の抜けた華綺の声。無理もない。今の状況に一番困惑していたのは彼女自身なのだから。

何、今の。体が勝手に反応した。

華綺は自分の手を見つめて黙り込んだ。

もうダメかと思ったのに。海堂のラケットがボールを捕らえた時には目を瞑ってしまいたかった。なのに、気持ちとは裏腹に体は信じられない速度で反応して…気付いた時には、気合いと共にラケットがボールを捕らえ、綺麗にコーナーに決まると、海堂の横を抜けいった。




『…どういうこと?』

海「おい!!」




疑念に捕われかけた華綺は海堂の声で我に返った。視線を向けると凄まじい形相の海堂と目が合う。




海「…まだ、終わってねぇぞ」

『は、はい!!』




あ、あちゃー。何か怒らせちゃったよ!!でも…何故だかは分からないけれど、この時の私はもう怖いとか嫌だとかいう気持ちなんて全くなかった。寧ろ負ける気なんて全然しなかったんだ…。





「ゲーム2-5!!凰乃リード、コートチェンジ!!」




ザワッ




信じられない展開に誰もが少なからず衝撃を受けた。




ポーンポーンポーン…




テニス部の皆が見守る中、華綺がボールをつく音がコートに響く。ボールを手にとって前方を睨む彼女がすっと手を上げると、同時にヒュッと言う音と共にボールは空へと高く舞い…



『あッ!!!』



気合い一発。相手のコートへ向かって叩き込まれた。




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