3 何かと思って近づくと、いきなり顔をゴシゴシと無造作に拭われた。 『ブッ!?ちょ、何すんの!!』 「キレイにしてやったんじゃん。感謝しろよ」 『だったらもっと感謝されるようなやり方しなさいよ!!顔痛いんだけど!!』 どうやら顔に付いていた血を拭ってくれたらしいが、もうちょっとましな方法があったんじゃないだろうか。 『あーぁ、お姫様だったらこんな乱雑な仕打ちは受けないで済むのになぁ』 「またそれかよ。そんなに姫になりてぇの?」 『そりゃね。やっぱり憧れるでしょ?女の子としては』 「女の子、ねぇ…?」 『何よ!!何か文句あんの!?』 自分が女の子らしくないことくらい分かってる。でもこうもあからさまに言われるとさすがに腹が立つってもんだ。不貞腐れてプイッと顔を背ける。 「…なれる方法、教えてやろっか?」 『え?』 するとまさかの予想外な発言が耳に届いて興味と少しの期待に思わず振り返る。どんな方法かと思えば急にグイッと腕を引かれた。 『わっ…ッん!!?』 傾いた体に腕を回してベルは私の唇に自分のそれを押し付けた。慌てて引こうとすると後頭部を抑えられてさらにキスが深くなる。 『んっ…ふぁ』 「ししっ。かっわいー」 『なっ!?////』 どれくらいそうされていたかは分からない。苦しくなって精一杯押し退けるとやっと体の自由が戻ってきた。解放された口から酸素を取り込んでいるとそんな事を言って頬を撫でてくるから、思わず顔が赤くなる。 「そんなに姫になりたいんなら王子と結婚すればいいんじゃね?」 『は?』 思いもよらないベルの言葉に一瞬思考が停止してしまった。 『…それって告白?』 「他に何があんの?」 『順番違うんじゃないの?』 いきなりキスしてくるなんて。しかも付き合ってもいないのに結婚とか。 「フツーなんてつまんねぇじゃん」 『どーゆー理由よ。ぬけぬけとキスしておきながら。それですむと思ってんの!?』 「だってオレ王子だもん」 『…はぁ』 そんなことをケロッとして言うから思わずため息を吐く。 「王子のモンになれよ」 『え…でも』 ベルをそんな風に見たことなんて今までなかったから答えに詰まってしまう。 「なれよ」 『う、うん』 「ししっ、決定〜」 ずいっと顔を寄せて言うからつい頷いてしまったけど。まぁいいか。何故か悪い気はしない。私がベルのことを好きかどうかというよりは雰囲気に流されただけのような気もするけど、少なくともこの胸のドキドキはこれが恋だと教えている。 煌びやかなドレスとは正反対の真っ黒な戦闘服。動きやすさ重視の短パン。その上私にはお淑やかさも品の欠けらもないけど、ベルと一緒なら私もお姫様になれた。 お姫様になる方法 「ししし、後でティアラ買ってやるから」 『え…それって付けなきゃダメなの?』 NEXTあとがき Back |