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何で気付かなかったんだ。エンツィオが巨大化したということは、ボスがヘマをやらかしたに違いないだろうが、問題はそんな事をやらかすボスはいつもへなちょこモードになってしまっているということだ。

それを抜かった私はまだまだだということなんだろう。しかし、重要なのはそこではない。はぁ、と溜め息をついて自分の上にズシッと乗っているマヌケに声を張り上げた。




『こんのばかボス!!
私はあなたの部下でしょ!?何で毎回あなたのヘマに巻き込まれなきゃいけないの!!?』




部下の前ではちゃんとしているはずのこの男、なぜ自分の前ではそれがないのか。ましてや私たちは付き合ってるというのに、自分はファミリーだと思われてないんじゃないかと少し悲しくなる。ボスにとってファミリーは特別で、何より大切にしているものだ。私もボスの特別になりたいのに…。

押し退けようとするが、さすがに大の男なだけあって、押しつぶされている状態ではピクリとも動かない。




「わ、わりぃ紗佳」

『いいから早くどいて!!』




もたもたしてるのを急かしていると楽しそうな声が降ってきた。




「おう、なんだボス。朝っぱらから見せ付けてんな」

「『ロマーリオ!!』」




2人してハッと顔を上げると、階段の踊り場からロマーリオが私たちを見下ろして笑っている。




『ちょっと、ロマーリオ!!見てないで助けなさいよ!!』

「いやぁ?
だってお前もまんざらでもなさそうじゃねぇか。紗佳?」

『ッ!?』




そういいながら、ニヤニヤするロマーリオにカッと顔が熱くなるのが分かる。彼は私たちの関係を知っているから余計に質が悪い。確かに嫌ではないのは本当だけれど、この状況は非常に困る。今の私には急ぎで届けなければいけない書類があのだ。早く持って行かなければお小言をもらうのは自分に決まっている。ボスのおっちょこちょいのせいで自分が怒られるなんて、そんな事はごめん被りたかった。




『私はこれからスクアーロのところに行かなくちゃいけないんだから!!』




そう、今日書類を届けに行くのはヴァリアーだ。大抵はボスのザンザスではなく隊長であるスクアーロが書類管理をしているから、ヴァリアーに、というよりはスクアーロに会いに行くと言う方が正しい気がした。
だから、催促のつもりでそう言えば、ボスの動きがピタリと止まってしまう。




『…ボス?』




ロマーリオが来て、もうへなちょこじゃなくなっているはずなのにすぐに退いてくれなかった事と合わせて不審に思いながら様子を窺おうとすると、さっきからは想像も出来ない素早さで今度はガッチリと押さえ込まれた。




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