1 広い廊下をカツカツとヒールを鳴らして歩く。これから、ある機関に書類を届けに行くのだ。 今日はいい天気だし、外は気持ちが良さそうだな、と思っていると、突然二階の方から盛大に物が壊れる音がした。条件反射で腰のリヴォルバーに手を伸すと、階段に向かってダッシュする。肩書きはボスの秘書だが、これでもれっきとしたキャバッローネの戦闘員だ。何かあった時にはすぐに応戦しなければならない。 しかし、そのすぐ後に聞こえてきた聞き慣れた鳴き声にほっと肩の力を抜いた。 『なんだ、エンツィオか』 どうせまたボスがヘマやらかして巨大化してしまったに違いない。くるりと向きを変え当初の目的を遂行しようと足を踏み出したが、そこで気を抜いてしまったのがいけなかった。 「紗佳危ない!!」 『え!?…ッきゃあ!!』 顔をあげて振り返った時にはもう遅く、私は不覚にも上階から降ってきたボスの下敷きになるはめになってしまった。 あのね。 Back |