3 『恭弥?どうかしたの?』 黙り込んでいた僕を見兼ねて隣に座っていた紗佳が声をかけてきた。今日もまた二人は屋上に来ている。彼女が僕の隣にいるようになってからどれくらい経っただろうか。今日はポカポカとしたあたたかい陽気だ。 「別に。何でもないよ」 紗佳の長い髪に手を滑らせながら答える。 「ただ…」 『ただ?』 「紗佳と出会った時のことを思い出していたんだよ」 そう言ったらどんな顔をするのかな?なんて好奇心から言ってみた。すると彼女は少し驚いたように目を見開いて、でも、直ぐにいつものふんわりとした笑顔になった。頬を少し桜色に染めて。 『そっか』 そういって紗佳は僕の肩に寄り掛かる。 『…今日はあったかいね、恭弥』 「そうだね」 君が隣にいるだけで、 僕の心はいつもあたたかくなる。 屋上の春風 そう、君はいつだって屋上に吹く春風のように… NEXTあとがき Back |