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季節は秋。

吹く風も少しつめたくなって、日向にいても肌寒さを感じるようになってきた。でも、そんなことはお構い無しに、屋上で昼寝をしようとする人物が一人…。




「ふわぁ」




その人物は欠伸をひとつすると屋上のドアを開けた。一気に開けた視界には誰もいない屋上と綺麗な青空。少し風が吹いて羽織った学ランを揺らす。その腕の腕章にははっきりと『風紀』の文字が。

彼はスタスタと自分の特等席である場所へと続く梯子の下まで歩いていった。そのまま梯子を昇るのかと思いきや、それを使わずに彼は軽がると上に飛び乗る。




「…ワォ」




そして、視界に飛び込んできたのは、気持ち良さそうに夢の世界へ旅立っている先客。彼女の栗色の長い髪が風に揺れる。




「授業中に屋上で昼寝なんて、いい度胸だね」




彼女の名前は確か、2-A夢見紗佳だ。最近問題ばかり起こす草食動物と一緒に群れていたのを見た気がする。あの赤ん坊としゃべっている所も。咬み殺してしまおうかと、一歩足を踏みだそうとすると…。






―…サァ






二人の間を一際強い風が吹き抜けた。




「…!?」




その時、雲雀には彼女が微笑んだように見えた。見えただけで実際微笑んだわけではないのだが、夢見の穏やかな寝顔に何故か目が離せない。

流れた雲に隠された太陽の僅かな隙間から漏れる光が夢見の上でキラキラと舞い、吹く風が彼女の髪を躍らせた。




『…ん』




紗佳の口から声が漏れる。少しだけ身じろぎした後、彼女の瞳がゆっくりと開かれた。




『…あ』




その瞳に雲雀を映すと、彼女は驚くわけでも、慌てるわけでもなく、ただ小さく声を出して起き上がった。



『…風紀、委員長さん』

「やあ、おはよう」




雲雀はとろんとした目を擦る彼女に微笑んだ。これが彼らの初めての会話だった。




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