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『あっくーん。』




まぁ、もしかしたらいるかもしれないから旧校舎の方にも寄ってみるかと思い、足を向けると誰かがいる気配がする。というか、物音がした。キヨの言ってた通りだ。あの開け放たれてる窓から見える銀髪は間違いなくあっくんだよ。それと同時に、何で彼があんな場所によく行くのかも分かってしまった。




『あっくん!』

「あ"ぁ?」




窓からひょこっと顔を出して声をかけると、トイレの窓下の壁に座った状態で寄りかかっていた彼は見下ろす私を下から睨んできた。属に言うヤンキー座りってヤツであっくんはそーゆーの似合っちゃうから皆には恐がられるけど、私には意味ないって分かってんのかな?




『もう。捜したぞー。出現スポットがトイレとか、物好きだねぇ。しかも旧校舎』

「ほっとけ」

『…タバコ、吸ってたんでしょ』

「…」

『よくないよ?そーゆーの』

「ハッ何を根拠に言ってんだよ」




バカにしたように言う彼に私はため息を吐いた。確かに今、ここにはそういった形跡はない。でも私は見たのだ。




『煙。見えてたよ』




正直に教えてやると、彼は苦虫を噛み潰したみたいな顔をしてチッと舌打ちした。そして、バレたからもうどうでもよくなったのか、今度は堂々とタバコを出して一本くわえると、それに火を点けようとする。私はそれに慌てるでもなく、再び口を開いた。




『あのね、部員の健康管理も大事な仕事ですから、マネージャーとして言わせてもらうけど。今すぐやめなさい。スポーツマンがタバコなんか吸ったらダメだよ?』

「けっくだらねぇ!」




私はそう言って再びタバコに火を点けようとする彼の手を今度はそっと押さえた。さり気なくその手からライターを抜き取る。




『じゃあ、これは幼なじみとしてお願い。心配なんだよ。百害あって一利なしって言うじゃない。あっくんに早死にされたら私…』

「…」

『老後の楽しみがなくなる』

「ふざけんなッ!!俺で何を楽しもうってんだ、何を!!」

『ぁだッ!!!!!』




そう怒鳴って立ち上がるとあっくんはゴンッと私の頭を殴った。けど、タバコを吸う気はなくなったらしい。制服の内ポケットにしまい直している。こうやって冗談混じりに話をそらしてやいと素直になれないんだから。ホント、世話が焼ける。でも、思い止まってくれたことは嬉しくて、ついヘラっと笑ったらまた舌打ちされた。酷い。




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