3 部活が終わるまで待ってると言ってしまったし、とりあえず教室に戻って自分の席に座る。この学校に転入してから毎日一緒にいたけれど、あの告白が本気だと知ってちゃんと返事をしなくちゃいけなくなった今、遠山くんのことをどう思うかなんて考えたこともなかったことに気付いた。 確かに一緒にいると楽しいけれど困った事も多いし、好きとは少し違うということは自分でもわかる。しかし、かといって嫌いかと聞かれるとそれも違うのだ。だから告白を断ってこの先気まずくなるようなことは避けたい。どう返事をしたらいいものかもんもんと悩んでいたら、廊下の方からバタバタと足音が聞こえて我に帰る。気付けばかなり時間が経っていたようだ。そうとなればこの足音の正体も自ずと分かる。 「柚樹!!たこ焼き行くでー!!」 ほら、やっぱり。っていうかたこ焼き行くってどんな日本語よ。たくさん運動した後のはずなのに元気な彼にさすが野生児と笑ってしまったけれど、私は頷いて席を立った。 2人で並んで道を歩く。向うのは遠山くんお気に入りのたこ焼き屋さんだ。近づくにつれて段々といい匂いが漂ってくる。 お店に着くと大きくてボリューム満点なそれを2パック購入。熱々のたこ焼きの上で青のりと鰹節が踊っている。ひとつを遠山くんに渡すと、近くのベンチに2人並んで腰を下ろした。 隣を見ると、遠山くんは既にたこ焼きを頬張っていて、その仕草につい頬が緩む。ハフハフ言いながら食べているその姿を横目に私もたこ焼きに手を付けた。 「柚樹青のり付いてんで」 『え、どこ!?』 自分のたこ焼きがふたつみっつと減っていく中で今まで黙ってたこ焼きを食べていた遠山くんがおもむろにそんな事を言ってきた。恥ずかしくて慌てる私に遠山くんが手を伸ばす。青のりを取ってくれるのかと思ったが、彼はその手を私の頬に添えたまま動きを止めとしまった。 『…遠山くん?あの、青のり何処に…』 「…ここや」 どうしたのだろうと声をかけると何故か顔を近付けてきた遠山くん。次の瞬間にはチュッというリップ音と共に唇の横に触れた柔らかい感触。ピシッという効果音が付きそうな勢いで固まる私を見て遠山くんはニシシと笑った。 い、今のって…。 自覚したとたんカァと顔に熱が集まる。何で、何で私はこんな野生児みたいな人にどきどきしてるんだろう。あり得ない。あり得ない!! でも、近づいてきた彼をかっこいいと思ってしまった。笑った顔をかっこいいと思ってしまった!!どうしよう…私、堕ちたかもしれない。 「柚樹。好きやで」 『!!?』 遠山くんずるい。このタイミングでそんなのって反則だ!!上がっていく心拍数と遠山くんの笑顔に私がつい口を滑らせたのはあと数秒後の話。 たこ焼き 『遠山くん!!好きです!!』 「わいもや!!」 NEXTあとがき Back |