2 『チョタ!!おはよう!!』 「あぁ、柚樹いたの?おはよう」 カッチーン。 今のはないでしょ。何それ。いたの?って!!毎日亮ちゃんと一緒に登校してるの知ってるくせに!! 私は昔から毎日幼なじみの亮ちゃんと学校へ来ている。面倒見のいい亮ちゃんは、ひとつ下の私を毎朝家まで迎えに来てくれるのだ。チョタと付き合うようになってからもそれは変わらず続いている。だから、チョタが私に気付かないはずがないのだ。 「おい長太郎。いくら何でもそれじゃ柚樹が可哀想だろ」 亮ちゃんがフォローしてくれるけど、チョタは何の事ですか?とかいってしらばっくれる。もう、いいよ。 『チョタなんか知らない!!』 いつもならそのままテニス部の朝練を見学しに行くところだけど、今はチョタの近くにいるのも見るのもイヤでそう叫ぶと私は教室へ走っていってしまった。 といっても、所詮私たちは同じクラス。しかも席は隣同士。嫌でも顔を合わせなければならない。席替えで隣の席をゲットした時は天にも登る気持ちだったけど、こういう時は心底嫌だ。ホント人間って勝手な生き物だと思う。 すると、よっぽど変な顔をしていたのか、前の席の友達が心配そうにどうしたのかと聞いてきた。折角だから愚痴を聞いてもらおうと、チョタがね…と言いかけたところで、肩に誰かの手がぽんと置かれる。 「柚樹、ちょっと」 『ギクッ』 噂をすればなんとやら。朝練を終えて戻って来たチョタに顔を引きつらせている友達に見送られながら私はズルズルと教室の外へ連れ出されてしまった。 『ちょっと何すんの!?』 はじめは大人しくして引き摺られていた私だけどいい加減痺れを切らして文句を言う。 「それはこっちの台詞だよ。いい加減気付いたら?」 『な、何に?』 「朝の嫌がらせ」 『あれやっぱり嫌がらせだったの!?』 まさかの爆弾発言に驚きが隠せない。チョタが嫌がらせをするような人だったなんて…。私、そんなに嫌われるようなことしただろうか。半泣きになりながら見上げるとやれやれといった顔で頭をなでられた。 「あぁすれば柚樹が宍戸さんと一緒に登校するのやめるかなと思って」 『だ、だからって無視しなくても…!!』 あの対応はかなり傷付いたのだ。グスグスと鼻をすすりながら抗議すると、柚樹にはもっと俺の彼女だっていう自覚をもってもらおうと思ってね。と軽い調子で返事が来た。 嫌われたワケではなかった事に安堵すると同時に、今までの行動がチョタのやきもちだったと理解する。何て分かりにくいんだとため息をつきそうになったらデコピンされた。痛い。 「だから、これからは俺が毎朝迎えに行ってあげるよ」 でも、その後にっこり笑ってこう言われたら素直に頷くしかなかったけれど、もう宍戸さんと一緒になんて登校させない。とぶつぶついってる彼はちょっと面白かった。 こっちを見てよ! 『チ、チョタって実は腹黒?』 「今頃気付いたの?」 『!?』 NEXTあとがき Back |