Happy Flight *ゲーム技バレ
高く、跳んだ。それも名一杯。 けれども。 跳んだ、だけだった。 俺は跳んだだけ、だったのだ。 これではまだ完成には程遠い。 如何せん、足を引っ張っているのは俺のほうなのに。 「よし、もう一回だ!」 何回やったって同じなのだ。この決定的な違いは多分俺にしかわからないだろう。彼にわかるはずもない、こんな調子でよく、かの豪炎寺修也に追い付こう等と考えたものである。 「剣城?」 ああ、俺は跳ぶことしかできない。 彼は翔べるのだ。其の羽を以て。 俺には羽が無いのだ。 翔ぶための、真っ白な羽が。
顔色が悪いよ、と自身こそ真っ青な顔面して、松風は木陰に俺を誘導した。このままやっても無駄だと、彼も気づいたのだろうか。否、自分を気遣っているだけなのだろう。 「さすがにファイアトルネード相手じゃ、やっぱり上手くいかないね」 「伝説の技だから無理も無い……、松風」 「ん、どうしたの?」 「俺はお前が」 羨ましいよ、つい滑り落ちた言葉は逆再生のように戻ってきてくれるはずもなく、松風はすぐさま目を丸くしている。やってしまったと思った時既に遅し。言わなければ良かった。 「なんで? なんで剣城は俺が羨ましいの?」 ちょっぴり訝しげな眉に、まさか羽があるかないかの話をする訳にもいかず、咄嗟の言い訳を口にする。 「あ、え、別に、ドリブル技とブロック技が両方あって、試合展開がしやすそうだと思っただけだ」 「嘘つかないの」 「……幼稚な喩え、だからな」 天使が羽を失ったら、天上へはペガサスに乗って還るのだろう。
「剣城」 「何だ。変な喩えなのは分かってるから言うなよ」 「剣城は翼を失ってなんか、いないんだからね」 今度目を剥くのは俺の方で、彼はセルリアンブルーの瞳を細めて小さく微笑して見せた。 「ロストエンジェル、翼を失った天使とも言うけどね。知ってる?」迷子の天使、とも言うんだよ――彼は、タンポポの綿毛のようにそっと、口にする。 「迷子は、ずっと知らない町にいたら悪い人に翼を切り落とされちゃうかも知れないだろ? その時は、ちゃんと僕が見つけてあげるから、ね。そしたら、また翔べるから」 陽炎はこの日陰でさえもぴかりと照りつけた太陽に加勢していた。木漏れ日が、まるで薄黄色の花のように散っていて、これが俺の羽根の一部なんだろうかとふと思う。 「一緒に、もといた場所に戻ろう」 それでも、彼の足元に居られればそれでいい、なんて。前まではそう解釈していたはずなのに。 「天、馬」 「俺は剣城と一緒だからね」 俺はもう、迷子の天使ではいられないことを知ってしまったのだった。 (救ったのはお前だ) 真っ青だった二人の顔色は、いつしか淡い紅に染まっていた。俺たちなんだか恥ずかしい話してるね、とはにかみながらライトブラウンのブロンドを揺らす彼の頭上にも、またコバルトの空が広がっているのだろう。 休憩終わりっ! 勢い良く飛び出した背番号8のいとおしさといえば、何にも例えることなど出来ないのだ。 このままあの雲に包まれて、殻も膜も全部いらない世界に二人きりで飛んでいけたらなぁと、俺は思った。
(あと少し踏み出せばあの青と溶け合える)
ファイトルDDが好きすぎてもう超になってますね……ラブラブシュート!!!結婚して!!!!!天京が!!!!!! 潜水おばけ様からお題お借りしました!ストーカーです!!
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