六曜の恋人
*ついったssログです














「羽根でもついてるんじゃないですか虎徹さん」

ハニードロップの色をした毛先が、ぼんやりと朝の陽の光に映る。冗談じゃねえ、俺が今どこに寝っ転がってるって話だ。

「ええ、ベッドですが」
「天使は仰向けになれるか?」
「それもそうですね、寝ているあなたにキスができないなら天使じゃなくていい」

#先に惚けたほうが勝ち





破れたページを持っていたのはあなただった。
奪ったわけではなくて、大切に仕舞ってくれていた。
僕は怒った。僕の大事なものをどこにやったのだと。馬鹿なことをした、と。
でも馬鹿は僕だった。その大事なものがあなただったことさえ、僕は破れたところに書き記したままだった。
でも彼は、笑っていた。

#大丈夫、安心しろよ





「お前のその肌だと、赤が映えて綺麗だよな」

琥珀の透き通ったのをいっそう細めた虎徹さんは、目の端に皺をつくりながらゆっくりと僕の上着に手を伸ばす。けど僕は知っているんだ。あなたの赤に染まる僕こそ美しい。
内ポッケにサバイバルナイフがあるのはあなただけじゃないんですよ、虎徹さん。

#仏様だって滅多に怒らない





電球を交換した。流行りのナントカってやつだ。

「うおー明るいー白いー」
「……従来のでよかった」

スリムな白いライトを置いて不機嫌に呟いたバーナビーのエメラルドの瞳が、ぷるりと照った。

「なんで?」
「だってこれ、ベッドルームのでしょう」

よくわかんないから後でアントンに訊いてみよう。

#友も引くほどの話





好きでこんなこと続けてるんじゃない、とは言ったが聞こえてないようだった。服を着たままお風呂まで来たので彼の膝はべしょべしょだ。

「ほら、毎回毎回風邪ひきますよ。早く拭いてください」
「お前が、」

お前が毎回俺を拭いてくれるならいい。泣き出してしまった虎徹さんの膝元は、僕の色をしていた。

#赤く口をあけたそれ





弱いものだ、僕もあなたも。まるでフォークで刺すとぼろぼろと崩れてしまう、バター・ケーキのように。いくら力を持ってたって、所詮僕らは肉の塊なのだ。

「だから人間なんだろ?バター・ケーキは喋ったりハグしたりしねえよ」
「だって、あなたの唇はこんなにもふわりと甘い」

そっぽを向く愛しい彼は、

#先に惚れたほうが負け





140字難しいッス……
ちなみにそれぞれの題名は、六曜の先勝、大安、仏滅、友引、赤口、先負から
あとタロットカードの大アルカナの6は「恋人」だそうです





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