あなたの生きる世界で生きる
*ひどいギャグ
*イナクロのゲームシステムネタバレ
*w←等のネットスラングが少々
*神童先輩が崩壊してるのは疲れてるから
*白竜が(物理的に)かわいそう
*ミジンコ程度に
これと繋がってる










鉄塔広場は寒い。すぐそばに湖があって、吹き抜ける風が冷たいからだ。そういや去年も神童に連れられてここに来たけれど、今年は待たされているほうである。

「三国さーん! お待たせしました!」
「おっ、神童と、……みんな?」
「お疲れ様です!」
「ああお疲れ……揃ってどうしたんだ?」

ずらっと一列に並んだのは神童、天馬、剣城、霧野、そして白竜だ。すっかりチームに溶け込んだ白竜を見ていると、昔の剣城を思い出す。なかなかあれも面白かったけど、今の丸くなった剣城が一番だと俺は思った。

「それにしても白竜はなんでそんなに力尽きてるんだ!?」
「ゼィ……れは……ハァ話は長くなり」
「そんなことより三国さんにこれを!」

ウワァそんなことって言ったよ元キャプテン。白竜はそれどころじゃないぐらい疲弊してるけど、GP値で表せないような苦労があったんだろうか。
ヨレヨレのふくじゅんボイスを遮って、テンションの高い神童は俺に赤紫色の何かを差し出した。去年も見た色だ。

「これは……化身コイン! しかも二枚も!」
「それを手に入れるのには、さほど苦労しませんでした。しかしこちらは辛かった」

続けて剣城がかばんから取り出したのは、賢王キングバーンWの覚醒書だった。急いで仲間一覧を見る。……やはり千宮寺から剥ぎ取られていた。毎度迷惑かけて本当に申し訳ないよ千宮寺。同じ火属性だから使ってやる訳にもいかないし。

「剣城!!……貴様は控えの欄で休んでいたというのに……さも頑張ったみたいに言うな! 泣きたくなゲェッホブッフォオ」
「ちょっと待て、俺に化身をつけてくれるのはすごく嬉しい。でもなんでコイン二枚必要なんだ? あと白竜死ぬな深呼吸しろ」
「今作、アームドには二枚使わないといけないんです。あとなんか白竜の咳気持ち悪い」

白竜の背中をさすりながら、半笑いの神童の話に耳をかたむける。前回が貴重すぎただけあって、集めるのが大変だったと思いきや、そうでもなかったらしい。同じ対戦ルートをぐるぐるする必要も無かったというわけだ。

「そうだったのか……迷惑をかけたな」
「でも剣城はずっと控」
「剣城は試合に出たくても出られなかったんだ!! しょうがないだろ!!」
「今日の神童先輩こわゲホフォ」
「俺だって、三国先輩に化身つける手伝いがしたかった。でも俺は白竜、お前とミキシマックスしなければいけなかったんだ。そのための控えだ」
「ぐッ」
「なあ、なんで白竜と剣城がミキシマックスしなきゃならなかったんだ?」
「それは俺から説明します! これの三つ目を見てください!」

はいはーい、と元気よく手をあげた天馬は、使用済みの千宮寺のキズナックスを見せてきた。キングバーンWを手に入れるためのものだ。
三つ目のスカウト条件は、王冠マークの横に……「ありえない破壊力」?

「なんだ、これ」
「それはですね! 今作から新たに始まった、プレイの記録、つまりスコアに応じて貰える称号のことです! ちなみにそれは、パワーの数値で3000以上出さないともらえないやつですね」
「3000!? 1000以上も大変なのにか!?」
「そうです。ゲームやってない人にご説明しますが、
俺、天馬がペガサスアークのアームドと
ストーリーで手に入れたミキシマックスをして、
さらに最強威力のシュートを撃つと、
俺今レベル75ぐらいですが、やっとスコアが1000ちょいですね」
「3000なんてどうやって出したんだ……?」
「俺と剣城のミキシマックスです」

体調の落ち着いたらしい白竜が、ようやくちゃんと声を発した。そうか、白竜はキック値が飛び抜けて高い。特訓して、剣城とミキシマックスなんてしたら、能力値なんてすぐに伸びるはずだ。スコアも伸びる。

「ミキシマックスベストマッチ……見た目は笑わせに来てるのに、能力は笑えなかったな……」
「白竜と剣城の個性、ぶつかり合ったら肉まんになったよね」
「やめろ思い出すwwwwwwwwwww気になる方は検索してねwwwwwwwwwwwwwww」
「神童も疲れてるんです、キャラ崩壊ぐらい多目に見てやってください」
「ああ……白竜を強くするのはわかった、で、できたのか?」
「スキルもフル活用しましたがダメでした。それで活用したのが」
「グランドラスターです!」

グランドラスターとは必殺タクティクスの一つで、敵に奪われないようパスを回せば回すほど、最後のシュートの威力が高くなるという仕掛けだ。

「最初はその辺のチームで試そうと思ってたけど、難しくて無理でした。一番レベルの低い半田さんの対戦ルートでセーブを」
「お前は今までに戦った雷門二軍の数を覚えているのか?」
「神童、そのポーズキュアなんとかのほうだから。スタンドとか出ないほうだから」
「セーブとロード繰り返したら、やっと成功したんです!
白竜が剣城とミキシマックスして、
シャイニングドラゴン出して、
ホワイトブレスを撃ったら
なんと4000を越えました!」

霧野が今までにないペースでツッコんでいる。異様だ。神童もありえないテンションでボケ続けている。正直怖い。
そもそも、千宮寺を出すために、関係ないドラゴンリンクの選手を三人もスカウトしなくちゃいけなかったらしい。そのためのアイテムも敵が全然ドロップせず、最悪でしたよーと天馬は頭を掻いた。
こいつらが俺のためにそこまでする理由とは、一体何だ?

「……俺じゃなくても、よかったんじゃないか?」
「え?」
「千宮寺に化身コイン一つ使えばアームドできる。ルジクだってプロトコルオメガ3.0の正キーパーだし……俺である必要性は」
「あなたは、今作のオレブンでもキャプテンですから」

神童は俺の目を真っ直ぐ見つめて、手を握った。さっきまであんなにうるさかったのに、小豆色の瞳は静寂に満ち満ちている。

「途中からただの作業ゲーみたいになってもみんなが頑張れたのは、ひとえに三国さんが好きだからです」
「神童……」
「あんたは素質を持っている」

白竜の声も静かだった。座ったまま、剣城に背中を支えられている。

「神童先輩や天馬には無い、また違ったキャプテンの素質だ。俺は今までそれを放棄し、強さを求めていたからよくわかる。あんたは、改めて大黒柱になるべきだ。そのためなら俺は何でもする、それだけだ」
「白竜……みんな、本当にすまなかったな」
「なんで三国先輩が謝る必要があるんですか。これは俺たちがやりたくてやったことです」
「そうですよ! アニメじゃザルだけど、ゲームは信介より強いんですかrゴッヒャウン」
「何のためのゴッドハンドXなんですか。自信持ってください」
「剣城、天馬、霧野……」

無言で天馬を蹴り飛ばした神童は俺の手をとって、鉄塔に登るように催促した。去年と同じだ。掌に握られているコインが、二つに増えていることを除いて。

「神童」
「なんですか?」
「最後ぐらい、三拓っぽく終わろうじゃないか」
「……そうですね」

にこり、笑みを溢した神童は、俺の手を繋ぎなおして、階段を一段登った。振り返ると霧野は血の涙を流し、天馬と剣城は白竜に抹茶を流し込んでいた。後で金平糖でも貰おうと思いながら、俺と神童は階段をゆっくり登っていった。
















三拓の日おめでとうございます





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