君が光であるために
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そりゃあ、ぼくのちからなんてちっちゃなもんですよ。君たちみたいな、きらきらして、大きくて、みんなの視線を片っぱしから掠め取ってゆくような、そんな君たちのちからなんかと対等に渡り合える訳がない。異端は僕だったんです。そしてそのことを、ずっと前から知っている。僕も、君たちも。
それをね、すくいあげてくれたのも、紛れもなく君たちなんです。無理やり肩を組まされて、頭をぐしゃぐしゃになるまで撫でられて、あだ名を呼ばれたりした。おかげで、君たちに呼ばれた名はほとんど君たちの数だけ、そっくりそのまんまあります。不思議ですね。たった数人なのに、呼び方がてんでばらばらなんですもん。おまけにあの人なんて、高校入ってから下の名前に変えてくる始末ですし。

僕は、君たちが大好きだったんだと思います。というのは、火神君に僕の「友人の嫌だったこと」をまるまる話したところから始まるのですが、火神君は言ったんです。
「お前、あいつらのこと大好きなんだな」って。
ばかじゃないのかと思いました。だって、嫌いだったことを話したんですよ? 普通逆じゃないですか?
でも彼の言うことなので、渋々ですが今だけ信用してみることとします。それを大前提に、これを読んでくださいね。僕が自分から敬意を払っているわけではないことを忘れずに。






黄瀬君。僕はべたべたとくっついてくる君がきらいでした。
顔がとてもかっこいいのも腹がたちます。後から一軍入りしたという点で、僕と君は少し似ていたかもしれませんが。
人にちやほやされて、ありがとうとその睫毛の映える笑顔で覆った心のなかではもっと高みに近づきたいと闘志を燃やす。君の中身は、きらいではありません。まああの人の指導もいいのですが、もっと君の中身に響く、といいますか? 日々の暴力もスキンシップなんでしょう。一番君のことを案じているのは、案外彼かもしれません。いや、そうでしょうね。僕は、君のそばにいるべきではありませんし。
いつも君のことを信じて、鞭を振るって、でも最後には頭を撫でてくれる。あの先輩と君が出会えて良かった。





緑間君。僕は目の前のものしか視界に入らない君がきらいでした。
睫毛や眼鏡のフレームが邪魔して見えづらいのでしょうか。コンタクトにするなら喜んで手伝いますよ? 勢い余って目潰ししてしまっても、怒らないでくださいね。
幸福者だ、と君を見ていて思います。だって君に足りないものは全部、隣にあるから。でも、それを受け止めて、そばに置いておくだけのデレを持てただけで、僕は及第点をあげたいと思いますよ。僕はね。
君は本当にまっすぐな人だ。それを何より知っているのは、中学から交流のあった僕らではなく、高校からいつも君のそばにいる彼でしょう。じゃれあいながら、背中を押し合いながら、無限の成長を見せるエース様と相棒に万歳。





紫原君。僕は何よりやる気の無い君がきらいでした。
何度ぶつかったかわかりません。僕も君も子供でしたから、今思えば不毛だったな、って思います。身長も相まってか、誰の言葉も君には届かなかった。仕方の無いことだったのでしょう。あの人……もういいや赤司君を尊敬した瞬間でした。だって赤司君の言葉は、少しだけでも君に触れた訳でしょう?
君も本当にいい人と出会った。彼もなかなか頑固だから、君とは拮抗し合うことこの上ありませんね。火神君のお墨付きですから。
そう、赤司君でさえ触れることしかかなわなかった(実際、しなかったのかもわかりませんが)から、もう一人のエースは化け物なんじゃないかと思い始めています。触れるどころか殴り倒す勢いでしたね。
そうやって君に体当たりしてくれる人、君にとっては初めてだったのではありませんか。どうかその「初めて」をなくしてしまわないように、彼らと進む道に幸あれ。





青峰君。僕は、僕の価値を壊した君がきらいでした。
そのぶんだけ、僕は君にいっぱい貰ってきた。力ももらった。勝利も。スポットライトを使って、僕を生み出してくれた。君はすごい人だ。知っての通り、僕の原点は君なんです。けど、
君のための僕は死んだ。
君が僕を殺したのだ。
もう僕は、君のなんかじゃないことを、改めて宣言させてもらいます。それが、過去の僕に対する供養なんです。
光には必ず影がある、それを教えてくれたのは君だった。だから、次は僕の番だったんです。憎らしいことに、気づけば君には勿体ないほど素晴らしい人たちが、たくさん周りにいました。それは僕も同じことですが。
大きらいなアホ峰君。君を認めてくれる人たちのあれやこれやに絡めとられていっぺん死んでしまえ。巡り会えたことに感謝をするまで、一緒にタッグを組むのはナシですよ。





赤司君。僕はまるで神様のような君がきらいでした。
恐ろしい、と称する方が合っているかもしれません。ああこれはきらいなところではありませんね。そう、君の手のひらの上で転がる僕らもきらいだったし、それを見て笑みを深くする君もきらいだった。呪いのようにうすびかりする橙のひだりめも。みんなの優しい優しい天帝さま、ご機嫌はいかが?
冷たい雨に打ち付けられることは誰だって嫌です。でもね、そうしなきゃ、濡れたアスファルトに反射した街灯の美しさなんて知ることができないんですよ。粒のかたちだって、温度だって、耳を突き抜けるタップ音だって、知らないまんまこの世を去るのはばかげている。風邪をひいてしまうのは、まだ心が未完成っていう証なんだと思います。人間みんな未完成なんですよ、ってのが僕の主張。
君は最近、一人と何かを分かち合いましたか?
悲しみ、憎しみ、叫び、迷い。はんぶんこにしたら、近いうちみんなどこかに消え去るんです。
喜び、楽しさ、誓い、勇気。共鳴しあったら、ずっと君の記憶になって、生涯消えないんです。
まばゆいばかりに光輝いて尚、かなしいひとのままの君に、一筋の影が訪れることを願って。






何度でも言いましょう、僕は君たちがきらいだった。影の存在を否定し続けた君たちが。時が経って、僕と火神君いう光と影が君たちを飲み込んだとき、ようやく気づくような馬鹿ばかりの集団に、キセキなんて名前は似合わないと僕は思います。だってみんなまだ高校一年生の子供ですからね。
そんな馬鹿を、つまりは君を気にかけてくれて、
肩をどついてくれて、
能天気に笑ってくれて、
優しく名前を呼んでくれて、
最後まで信じてくれて、
遠くから見守ってくれて、
そんな存在がいることを、どうか忘れないでください。今までも、そしてこれからも。……言われなくても、ですか。随分強気なんですね。知ってましたけれど。
僕は特別あの頃の君たちを好きになろうとするつもりもありません。
なぜなら。僕がきらいなぶん、隣にいる君の影が、全部ひっくるめて好きになってくれるから。

さようなら、僕の五つの太陽。
















20120926 高松ぺたる

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