You damned fool! much fool!!
青峰が俺んちに来た。まだそんな季節でも時間でもないのに、ロングコートを羽織って来た。前は閉めている。暑い、と一言だけ言って、いつもより三割増しで黒いそいつはダイニングテーブルにどかりと座り込んだ。このあまり広くない部屋に190超えの男二人だ、正直かさばる。しょうがないから夕飯を作ることにした。今日はシチューだ。

「火神ぃ」
「料理の邪魔すんな」
「わぁってるって」

コートを脱がないまま背中に覆い被さってきた彼の首が少々汗ばんでいて、改めてこいつはここまで馬鹿だと思った。シルバーのチェーンネックレスが貼りついている。見ていて暑苦しい。

「家ん中上がったら上着は脱ぐのが常識だろバカ」
「あー……うーん」

そりゃそーだわな、とおもむろに言って、コートのボタンに手をかける。トレンチコートだからあれだ、ひっかけるところ? をその大きな手で器用に外していく彼には生活感の欠片も見当たらない。ここにいるのが場違いなような気がしてくる。
ロングコートも似合っているけれど、自分としてはどちらかというとジャケットのほうが好みだ。メンズの鑑を素で行くと思う。
本人には言わないけど。

「じゃーん」
人がせっかく好きな奴について想いを馳せていたというのに、この馬鹿はコートを脱いだ上半身を見せびらかしてまた台所へ突入してきた。ワイシャツにリボンタイ。いわゆるユニセックスなコスプレで、飽きたらずまだ鞄から何か取り出している。埃がたつだろうが。

ようやく合点がいったのは、青峰が完全体になったとき、付け合わせのサラダを盛っているときだった。

「トリックオアトリート!」
「あ」
「あじゃねえよ、ほら菓子かイタズラか選べ」

俺のワックスを勝手に使って髪をオールバックにした吸血鬼は、まごついてるとイタズラやべーぞなんて言って、シチューを皿に盛った。見た目は本当にいそうってぐらい“吸血鬼”なのに台無しだ。鞄から取り出したのは薄っぺらなナイロンの上着らしく、たくさん内ポケットがついていた。ハロウィン専用なんだろう。

「つーか、そのサイズよくあったな」
「一般人が着てだぼだぼになるデザイン、だってよ」
「丈足りてねぇじゃねぇか……」

ハア、とため息をついた俺に吸血鬼の口元が歪む。一滴残らず搾り取られそうだ。いや血液の話だけど。

「それより早くイタズラさせ」
「残念ですね青峰君。君の考えはお見通しですよ」
目をむいて音がするぐらい勢いよく振り返った青峰の首はもう乾いていた。玄関には白いフードを被った黒子と、黒猫の耳と尻尾をつけた高尾、無理やり着せられたのか私服の上にこれまた黒いコートを羽織っている緑間がいた。頭に安っぽい魔法使いの帽子を被らされている彼を除き、一様に勝ち誇ったような顔をしている。

「おまっテツ! てめえ今日は降旗の家だって」
「君が降旗君と繋がっている意味からしてわかりませんよ。まあそのお陰でここまで来れたんですが」
「クソッフリのやつ……じゃあ緑間と高尾はなんでいんだよ」
「拾いました」
「犬扱いとか黄瀬以来じゃね?」
「……まあ上がれよ」
「そうさせてもらうのだよ」

ここで一番発言権があるのは俺のはずなのに、なぜか皆当然の如くリビングに座り喋り始め、当然の如く夕飯が出てくるものだと思っているらしい。明日の朝のぶんが無くなってしまうな、と思いながら奇跡的に一本入っていた汁粉を緑間に与えたことで思い出した、そうだ今日はハロウィンだ。菓子を求めて来ないから忘れていた。青峰の顔を見る。
……今日ぐらいは。

「青峰」
「あ゛……どした火が」

空気が、固まる。
一拍後、火神クン真っ赤ーって高尾が茶化す声が聞こえた。微笑ましいものを見る目でこっちを見るな緑間、何故そんなに嫉妬に燃えてるんだ黒子(やっぱり元相棒だとまずかったか)。ほんと、もういいよはこっちの台詞だ。人前でこんなことさせて、こいつも馬鹿だ。馬鹿。俺も馬鹿。
口で移したポッキーをばりばり食べながら、青峰はトリックもトリートも貰っちまった、とか浮わついたことを言った。カボチャに頭ぶつけて死ね! 今すぐ!

















ハロウィンに何か書こうと思って、でも自分には青火しか選択肢がありませんでした。馬鹿な話が書きたかったのですが火神君が馬鹿馬鹿言ってるだけの話になりました。なんだこれ。
とりあえず黒緑高出せただけで幸せですありがとうございます! やっつけ仕事ですいません!
ちなみにタイトルは「お前マジ馬鹿!ほんと馬鹿!!」





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