汚いことなら知りたくない
むらのない白い肌に、ガラス玉のような汗がひとつぶ、置いてある。浮いているとか、流れるとか、ではなさそうだ。英語でputって言うんだっけ。この前赤司に教えてもらった単語の中からようやく一つ引っ張り出すと、目の前の鮮やかな抹茶色の頭が真っ白なタオルに隠れてしまった。なんだか眼鏡が邪魔そうだ。

「じろじろ見るな青峰」
「マジか、無意識だったわ」
「マジなのだよ」
「……なんかお前に若者言葉使わせたくねぇな」

自転車のペダルの重さを切り替えるやつ、ハンドルによくあるじゃん。緑間はあれに似ている。正確に言うと、その仕組みが似ている。機嫌のメーターが分かりやすくて、なんだか数値にできそうな気がするから。もちろんそんなことが出来たとしても、俺は奴のゴキゲンを取るような真似はしないから、あんまり意味無いんだけど。緑間をあまりよく知らない友人、例えばクラス分けで緑間が俺らと別のクラスになってしまった時とか、周りの奴らはけっこう重宝するんじゃないかな。緑間君今日は“3”だねお汁粉あげた方がいいかな、なんて。
あいつの機嫌とるなんざ馬鹿げていると俺は思う。だから、そういうのは見ていて眠くなってくるんだ。あいつが心動かされる瞬間がごくごく限られていることをほとんどの奴は知らない。バスケ関連と、一対一の戦い(ワンオンワンもたまに付き合ってくれる)と、あと何だ。占い事もか。
とりあえずわかったこと。こいつ、知ってたけどかなりめんどくさい奴だ。口に出してみようか。

「お前ってめんどくさいな」
「いきなり何を言い出すかと思えば……売り言葉ならお断りなのだよ」
「あー、なんだそれ。喧嘩? そーゆー気はない」
「じゃあ何なのだよ!」
「なんでお前怒ってんだよ」
「お前がぐだぐだ意味のわからないことを口走っているからだ」

まんべんなく濡れたフェイスタオルをひっつかむ。この蒸し暑い体育館の中だからなのかあり得ないほど気持ちいい。さつきの持ってきたものだから、らしい。
すぐ横のゴールでは、テツが黄瀬にパスとはなんたるかを熱心に説いている。おすわり状態の黄瀬はキレーに足を揃えて三角座りだ。お前は小学生か。

「緑間」
「いい加減に「睫毛、ついてる」

もちろん嘘だ。本当は、その柔らかそうな肌に触れたかっただけであって。実際は想像したより弾力がある。色白でごまかしてはいるが、立派な男子の肌だった。まあごまかしてはいないか。

「っ」
「とーれた。あそこ空いたらワンオンワンな」
「ちょっ」
「緑間」

滑り出しそうな言葉を必死に抑え、おどけるように俺は彼の名前を呼んだ。緑間の乱暴に拭われた汗の痕、肌が擦れて赤くなってしまったところを見る。ああ痛々しい。本人は別に痛くも痒くもないんだろうが。やっぱり日焼けしていないからか、そういう痕は分かりやすく、カタツムリの這ったようにぺらりと張り付いていた。

「ごめん、俺な、汚れきってるんだわ」
「あ? 汗をかくのは当然のことなのだよ。生理現象を綺麗汚いと言うのは野暮ではないのか」
「チクショー理屈人間め! しょうがないからこの青峰様が抱きついてやろう!」
「あっついのだよやめろ!」

顔を湯だらせているのは俺も彼も同じだった。さらさらしたTシャツの生地が腕に心地いい。それは緑間も同じなのか、俺が座ったままもたれかかる体制になっても、そのままの姿勢でいてくれた。もうちょい倒れたら、膝枕とかできると思う。
てくてく近づいてくる二人ともう一人には、意外と気づかなかった。


「発見・いちゃついてる部員、発見・いちゃついてる部員。黄瀬君、至急赤司君に連絡を。どうぞ」
「オーライ黒子っち! どうぞ」
「青峰もっと目線こっち」
「ちょ赤司カメラ」
「いい加減やめるのだよ!」


ごめん緑間。俺最高に幸せなんだ。
嫌だとか言いながらそばにいてくれるお前が、どうしようもなく愛しいんだよ。
















青→→→←←←緑
書きたいものを書きました。キセキ内カップリングでダントツに好きなのが青緑です。緑高と青火サイトではありますがホントこの四人がわいわいしてくれれば何にも言うことないんですよ。青+緑+火+高とか俺得すぎて涙出ます。火高とか緑火とか青高とか大好きです。青高……って可愛くないですか全然接点ないけど。
タイトルは潜水おばけ様から





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