きみいろにそまったらの話
部屋の窓から月光が射している。きっれーな真ん丸だけど、これはまだ満月ではないらしい。あいつはこういうことに詳しいから訊かなくても教えてくれた。何十年かに一度、満月が一月に二回見える月なんですよ、と何故だかいい笑顔で語っていたのが記憶に新しい。
隣で寝こけている青い髪の腕がまだどうしても慣れなくて、すこしだけ首を傾けてみる。腕枕って軽い女相手でさえ痺れるのに重い俺なんか乗っかってしまってなんだかすごく申し訳ない気持ちになる。こいつの前じゃ絶対に言ってやらないけど。
向かい合うようにして寝返りをうつと、普段ひどく人相の悪い彼が随分と無防備な顔をしていた。こいつのこんなところ見てしまっていいのだろうかと若干罪悪感さえ覚える程の無垢な寝顔。おいあおみね、なんて小声で唱えてもぴくりとも動かない。

「あー、ほんと」

明日は折角の誕生日っていうから、俺は彼に家に来るよう誘った。飯とバスケで釣ったらあっさりついてくる所がまあアホなんだなあと思うけど。
お互いがお互いに忙しかったせいか、この頃全く会えてなかった。桐皇が合宿てのもあって青峰は本当に疲れていたようだ。ヘロヘロの桜井から訊いたから間違いない。青峰は飯を食い終わってベッドに横になった瞬間、寝てしまった。
勿論彼だって会いたかったはずだし、俺だって女々しいことを言えばずっと待ってた、だ。でも、そうじゃなかったら? 俺が無理やり彼を引っ張ってきた形になってしまっていたら? 文字通りの「なんにもしてない」が不安いっぱいに頭を掠める。疲れているとはいえ一緒に布団に入ったのにも関わらず即寝なんて聞いてないぞ俺は!

ぐるぐる考えていたら眠気も覚めてしまったので、水を取りにいこうとベッドを降りた。ぎしりとスプリングが歪んだ音がする。

瞬間、俺の身体が、動かなくなった。

焦って何事かと下を見てみれば、目を瞑ったまま抱きついてくる青峰の姿。ちらと見えたにやけた口元だけが憎らしかった。さっきまで枕と化していた腕が、がっちり俺の腰に絡み付いている。

「嘘寝か青峰コノヤロウが」
「こっちの言葉じゃ狸寝入りって言うんだぜハニー、あとガチでさっき起きた」
「うるせえよ誰がハニーだ誰が」
「ばーろーハニーはお前だろうが」ちくしょう、さらっとこういうこと言ってくるからこの男はたちが悪い。腕の力が急に強くなったと思えば、視界が反転してあっという間に背中にシーツ、目の前にガタイの良い恋人という、漫画によくあるシーンになってしまった。改めて顔を確認する。やっぱり1人ぐらい殺してそうな顔つきだった。本当人相悪いな。

「知ってっか火神」
「なんだよ」
「明日俺の誕生日」
「知ってるあほ」
「あと、ブルームーンってゆーんだってな」

窓の外を見上げて、すぐに彼は俺に視線を落とした。淡い月の光が頬に反射していて、やっぱこいつかっこいいなあなんて柄にもなく感心してしまう。

「満月二回あるやつだろ? 黒子に聞いた」
「あ? ……ああ、テツ喋ってねえのか」
「何をだよ」
「8月2日と8月31日だよ。その満月の日」
「え、それ」

だから俺の誕生日とお前の誕生日ってことだろうが。声も出ない俺ににかっと笑って、彼は続ける。

「まあお前と出会えたのもテツのお陰だし? 勝負できたのも元々はお前がキセキの世代の存在知ったからだってテツから聞いた。でもよ、これは本当の奇跡だと思う。俺、生まれてきて良かったよ。お前らに出会わなかった俺なんて想像できねえし、俺に出会わなかったお前らも想像できねえ」
「あお、みね」
「なあ、愛してるよ、大我。これからもずっと、俺に奇跡見せてくれよ」
「……なんだよ、おまえ」

俺に会いに来てくれたのも全部俺の為だったのか、と俺は今さら目の前の男の青い瞳を見つめていた。blue moon、月が青くなるわけではないけれど、この人の目が月なら毎日見つめてやるのに、と思った。

「……Me too.」
「ハァ? なんだって?」
「あーもう! 寝んぞ大輝! 言っとくけど明日部活休みだからな俺!」
「おっ奇遇だな、俺もだ」

そのまま俺を抱え込んだ青峰の腕は俺よりも少しだけ体温が高い。馬鹿野郎これのせいで早起き出来なかったらどうしてくれるんだ。ちゃんと起きられたら、冷蔵庫のど真ん中に陣取ってるあれも、朝ごはんと一緒に叩きつけてやろう。こいつに一番早くおめでとうを言うのは俺だ。















実は黒バス本命は青火だったりします。ケンカプに弱いんです。察して下さい。
寝るとか言っておきながら五分後にはこいつらお楽しんでると思うんですが気のせいではないと思います。でも青峰さん疲れピークだから三回でやめると思います(絶倫)。それでも火神さんは気合いで起きます。さすが嫁ですね。
どうやらテツ君は光に甘甘らしい





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