Years bring wisdom
*アニメゴッドエデンあたり






星が瞬いている。本当の本当に、瞬いている。光るとか輝くとか、そんなんじゃない。弾けてるとか、煌めくとかいった方が正しいと思う。
「松風」
「ん?」
「ねむい」
「おれはどっちかっていうと眠れないかな」
「なんだそれ」
そりゃ隣に京介がいるからだよと言いたかったけれど、ひどく機嫌の良い今の彼の前では喉元に留めておく。
シュウに教えてもらったゴッドエデンの一角は、微風が心地よい草原だった。折角だし、と剣城を誘ったら照れながらもOKしてくれたのでここにいるという次第。
二人して地べたに横になる。都会育ちの剣城にとってどうやら初めての経験みたいで、目をもうきらっきらにさせながら瞬きもせずじっと眼前に広がる細かい星の海を観察していた。ざっと六等星ぐらいまで見えるかななんて彼の知らない言葉を溢してみたりするけど、それほどロマンチストではない京介の反応は馬鹿みたいに薄かった。さっきの言葉は言わなくて正解だ。
「流れ星とかあるかもね」
「ほんとか?」
「うん、シュウ言ってた」
そっと、星明かりに紛れて俺は手を伸ばす。冷たそうな白い指先が驚いたように飛び退いた。俺は小さく笑う。
「取って食いやしないよ」
今度こそと重ねた手のひらから、ひやりと剣城の体温が伝わる。疲労が限界にきているのか、はたまた俺の子供体温に安心したのだろうか、うっとりと瞳を閉じた彼はとても美しかった。









「寝た?」
「うひゃぁ!?」
黒に紛れただれかさんの声に、俺は悲鳴をあげた。こら起きちゃうでしょうと唇に人差し指を乗せた彼の前髪が急な突風に吹かれて、唇を離すとぴたりと止んだ。シュウは一度気配を消してしまうと、白竜でも気づかないぐらいらしいから、俺が驚くぐらいしょうがない。
「も、おどかさないでよー」
「ごめんよ、……霧野さんとか白竜ぐらい明るい色の髪だったらよかったんだけど」
でも僕には似合わないね、と言ってシュウは毛先を摘まむ。闇にも似たそれはいつも通りのまっくろくろすけだった。

俺のと繋がれたぶきっちょなそれを、彼は愛しげに眺めている。もう力は入っていないはずなのに、シュウがいくら絡んだ指をほどこうとしても全然取れなかった。くすり、一つだけのきれいな微笑が聞こえる。
「剣城、昼間はかっこいいのに、寝たら案外かわいいね」
「へへへ」
「好きなんでしょう?お互いに、そういう意味で」
「へ?」
ひどく間抜けな顔を晒した俺に、彼はまた笑んだ。僕にはねお見通しなんだ、って緑青の草むらに座り込む。助けてと剣城に視線を寄越したけれど俺の大事な恋人は全く起きる気配が無い。
「えと……その」
「いいよ。別に非難するつもりで言った訳じゃあない」
「…………ごめん、黙ってたりして」
「大丈夫だよ。……だって、ぼくは」
かれになにもいえなかったから
「シュウ?」
「ごめんよ、君には関係ない話だった」
月の明かりさえ霞ませてしまうほどにちかちか主張する星々に目を細めて、シュウはおやすみと告げる。彼の座っていた場所にはクローバーの花の株があったけれど、なぜだかひとつも潰れていなかった。
「あっシュウ!」
「どうしたんだい天馬」
「明日も練習付き合ってくれるよね?」
「……勿論、君がそう望むなら」
またいたずらにびゅうと一陣、風が通っていった。優しくて涼しくて柔らかな、初夏の風だった。剣城がぴくりと身体を揺らす。
「あ、剣城起きた?」
「ん……悪い、寝てた」
「風邪引くよ?戻ろう。ほらシュウも」
「シュウ?」
そこにはあの闇の色は無くて、代わりに黒々と広がる草原が、途方もなく広がっているだけだった。不思議そうに俺を見た剣城は、さっきまでいたシュウの存在を問うて真っ赤になっている。そういえば俺もつないだ手を隠そうとはしていなかったから、まあ、それだけ彼の前では自然体なんだなーぐらいしか思っていなかった。不覚。
「ばか!なんで離さなかったんだよ!」
「だって取れなかったし……シュウだって寛容だったし」
「あああもう……俺のばか何で寝たんだ……」
「ねえ京介」
このまんま帰ろう?って笑いながら問いかけると、耳まで染めた剣城は恥ずかしそうに顔を覆いながら小さくうなずいていて、寝てる顔もかわいいけどやっぱりこっちがいいな、なんて思った。

痛いほど星は瞬いている。太古から変わらぬ濃紺の夜の上で、永遠の輝きを称えるかのように。












久しぶりに天京さん書いたら天馬がすごい詩人になったでござる
しかし私はシュウ君に夢見すぎてますね。天京はお互いに大好きだといいなあ
タイトルは亀の甲より年の功ってやつです





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