ファンタジック・ホワイト
レースのカーテンが、静かに夏の空気に揺られているのがわかる。いつ来ても緑間の部屋、というか家は清潔性のある白が目を引くからこんな俺の目から見てもすごく育ちいいんだなーってのがわかった。それが最初の感想だった気がする。
「真ちゃん、それ暑くねーの」
もう8月だというのに、緑間は一向にボトムスを短くすることを拒んでいた。でも俺も足より二の腕とか背中派だからいいんだけれどと言うと、彼は苛ついたように眉根を寄せて
「誰もお前の性癖など聞いておらん」
「だって暑いんだもん!真ちゃんのそのカッコ視界的に暴力だもん!あっそうだアイス食べようアイス」
水音みたいにポリエチレンの擦れるのを聞いた緑間は、その長い下睫毛と薄い瞼をひたひたとくっつけてから、ベッドの上に読みかけの文庫を置いた。部活が部活なもんで、代謝Maxの俺たちは何かと汗をかきやすい。それまで本を掴んでいたほうの手がひとりでに動いて、ゆっくりバニラカップを誘拐してった。
「溢さないように食べるのだよ」
「わーってるって」
勢い良く剥がした包装から水滴が飛ぶ。がさっとひとまとめにしたごみ袋を脇にやって、砂糖の塊にかじりついた。もう天気予報で頼りになるのなんて気温ぐらいだ。
レースからのぞいた淡い太陽が、俺のチョコレートバーを速攻で溶かしにかかった。垂れないように必死で先端を下にしたりする俺を緑間はふと見、白をさらう。ぽたり、と俺のむき出しの腿にチョコの滴が垂れて、急いでティッシュを抜いた。緑間が目を丸くしているけれど、どうしたんだろう。
「高尾」
彼の形のいい指が、アイスを彼の口元へと運んで行く。緑間が食べながら話しかけるなんて珍しい。
「え?っちょっとまってこれ食べ終えてから」
からん、と木の棒がフローリングに跳ね返った音がした。

「ん、」
自分で汚すなと言った割りに何してんだ、と俺は心の中でひとりごちた。重ねた口内からバニラの甘ったるい香りが流れてきて、媚薬なんじゃないかってぐらい嗅覚と味覚を侵食していく。こんなのが大量生産のちコンビニで売られてるんだ、たまったもんじゃない。
あと一口だったのに惜しいことをしたなあと考えてる余裕もなく俺の酸素は着々と奪われていく。涙を通して見た緑間はいやに仏頂面で俺の唇を舌で弄んでたからちょっとむかついたけど、その綺麗な緑の瞳と、そっと押した胸の意味を解ったことに免じて許してやろう。
「ば、がっつきすぎ……」
「馬鹿はお前だ高尾。あれほど汚すなと何度も」
「だから!真ちゃんがちゅーしてきたからでしょ!」
「ああ」
普段は絶対見せないよな、緑間のきれいな二重が揺れる。シニカリズムとかアナーキーとか、いつも言われてるそんな言葉が、今は全然似合わない。けど、これはいつもの緑間真太郎だ。緑間であって、そうじゃない。
「旨そうだったから」
「旨そう、って……」
仕方なしにティッシュでチョコレート風味の残骸を処理してた俺の背では、また緑間は黙々とアイス食ってた。いつも俺はいわれっぱなしで逃げられっぱなしだ。もうやることもないから緑間の横顔でも観察しようと思って、ぴったりくっついて座る。
「……気が散るのだよ」
「え何、もの食べるのに集中すんの真ちゃん」
「……馬鹿なのは知っていたが……」
すると、黙って真ちゃんはスプーンをくるっと翻して俺に向けた。いつもの小豆とはすこし違う種類の甘い匂いにくらくらする。口に含むまでもなく、溶けた砂糖が喉奥にひっかかった。
「高尾、これからは俺以外と居るときはそれ食べるな」
「何でれふか?」
「……もういい」
ふいと顔を背けた緑間に問うとまだ分からないのか!と言われた。心当たりを思い出して一人赤くなった俺も大概鈍いらしく、自分も人のこと言ってる場合じゃなかったみたいだ。
俺が短い丈のズボンをはくたび、揺れるバニラの芳香を思い出すようになったのは言うまでもない。






おい狙っているのか誘っているのかあれはなんだけしからん棒アイスけしからん待て舌を出すな舌なんであんな赤いんだ血みたいだ 垂れるぞそんなんじゃ あああああああ太股 太股にアイス垂れあああああああ太ももあああああああちょっと ちょっと待て拭くんじゃない舐めさせ……っ俺は変態ではないのだよこれは高尾のせい高尾のせい まあキスぐらいは許してやろう(真ちゃんの心の中)

純情×2のはなしでした。やることしてない。
二人とも人並みに性欲的なものはあると思うんですが、怖がって手出せない緑間×まずそういうことしたこともない調べるのも怖い高尾 でもかわいいなーという。高尾の足絶対綺麗だと思いますですはい





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