手のかかる後輩のはなし
*ジェイク戦後






思えばそれは、彼にとって当然のことだったのかも知れない。
実に20年間の間を復讐だけに当てて生きてきた。守るものは自分だけで事足りた。完璧な自分に友情や色恋など必要無かった。ただ、自我が存在していればそれでよかった。思えば彼は人間の器というものを測るメーターが未完成なまま、身体だけ先行し成長していたのだと今になって気づく。身体は大人でも内側は四歳から成長していないような、とても不安定な人に見えた。初対面の時のせんぱい、の四文字に、えらく感情が籠っていなかったことが昨日のことの様で、それでいて随分昔の事のようだ。
障子に穴を開けるのは無邪気な悪戯小僧と相場が決まっている。風化して歪み黄ばんだ和紙を丁寧に、慈しむように張り替えたのは間違いなく相棒そのもので。骨組みはちゃんと残して、丈夫に、これからも使ってやるからなと優しく労る姿を彼は滑稽だと思っただろうか。過去の記憶となって、彼の心には何か残ったものがあるはずだ。
彼は本気だ。どうしようもないぐらい真っ直ぐだ。
そしてそれが、どうしたって叶わないことも知った。彼は幼稚園児ではなくなった。吉か凶か、彼は叡知を手に入れてしまったのだ。
いくらエメラルドグリーンの瞳に微熱を帯びさせても(僕らにとってはバイソンさんも丸焼きに出来るほどの熱量なのだが)、思い人にそれが伝わることはない。熱湯でもぶっかけない限り動くはずがないことを彼は知らないだろう。知っていたとしても、自分の将来と見比べ壁になる。切なすぎる片想いと読めば簡単なのだろうが、幾重にも重なった苦難に果たして、彼は立ち向かうだけの必要性を見いだせたのだろうか?

「先輩」
「あ、お疲れ様です」
「……さっき虎徹さんと何を話していたんですか?」
「……ふふ」
「何が可笑しいんです。人に言えることでは無いようなことですか」
言葉がおかしいところを見ると、冷静なようでひどく動揺しているようだ。だから周りからバレバレなんだけどそんなところも初々しく見ていて楽しいのは僕だけじゃないだろう。
「え!いや、そういう訳ではないです」
「だったら!」
……もうちょい落ち着けって。「バーナビーさんの事ですよ」
「、え」
彼の表情が一瞬のうちに七色全ての色に変わる。この人は相棒に出会ってから本当に表情のレパートリーが増えた。一個人として嬉しい以外の感情が出てこないところ、先輩風を吹かせたくなるのも時間の問題らしい。
「今までこなしてきた事件とか、この前家で一緒に呑んだ事とか、バーナビーさんが連れていってくれるお店に居酒屋が増えた事とかですかね」
「そう、だったんですか。……激昂してすみません。つい、」
「あ!いや!いいんです。それとですね」
「?」



「顔真っ赤にしながら嬉しそうに話してましたよ。『本当に、可愛いんだ』って、ね」



「え……」
「行ってきたらどうですか?もうトレーニング終わったんでしょう」
言うや否や、彼はハンドレットパワーを発動させんばかりの勢いで更衣室に駆け込んだ。タイガーは少し早くトレーニングルームを出たので、バーナビーの速さなら追い付ける筈だ。今教えていなければ間に合うことも無かっただろう。
脱兎の如く上着を掴み、自動ドアを手動でこじ開けんばかりに睨んでいる。そんな彼を尻目に、案外自分が同性愛を受け入れていることに気がついた。

「やっぱりバーナビーさんにとって、当然のことだったのかも知れないなぁ」

やっとのことで開くエレベーターから覗いた薄桃色の目尻に礼を言われた気がして、僕はゆっくりとした足取りでトレーニング機材に背中を向けた。








 あ
 あ
  
 何
 て
 手
 の
 か
 か
 る
 後
 輩
 !








長い(´・ω・`)萌えない(´・ω・`)おじさん出てこない(´・ω・`)
折紙先輩の独白みたいな感じでした。独白が書きやすいのですがカッチリしすぎましたね(´・ω・`)(´・ω・`)(´・ω・`)(´・ω・`)
セイ先輩との相互記念でした!
セイ先輩のみお持ち帰り可能





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