大好きなんて言えなくて
*月山戦直後






なんで何も言わないまま行ってしまうんだ、と最初に思ったのは不信感より彼の心配だった。
そのうち、それが怒りや悲しみに変わり、それを噛み殺しながら、月山とも戦うはずだった。
そう、そのはず、だったのに。
いつの間にか、彼らは成長していた。
前線で吹き荒れる台風の中、
そう、あの赤紫が。
孤高の鷹が。
本気になって戦ったのだ。
俺たちに出来なかったことを、
後輩は見事やってのけたのだった。






「お前、泣いてただろ」
「うるせぇ」
たまたま廊下が映る鏡に、俯いてしゃくりあげる姿が異常なほど後ろ髪を引いた。肩に手を置くと、細い肩に白い腕、まるで女のような睫と潤んで真っ赤な眸。何だこいつ、全然変わってなんかないじゃん。
「はなせ」
「なんにも持たないでボロッボロ泣いてるやつを置いてくぐらい、俺は優しくないからな」
「……おまえは意地悪なんだよ」
前から素っ気ないのなんて知ってるだろ、と言うと、入学したときはもっと可愛げあったぜと南沢は皮肉を口にした。
ああ、お前はこれでよかったんだな。
わざわざ遠くまで行ったけど、ちゃんと見つけて帰ってこられたじゃないか。
ばふ、と勢い良くきれいな顔にフェイスタオルが押し付けた。汗臭いと呟かれると思ったけれど、彼は何も言わず、ただ嗚咽を漏らしていた。
ずっとそばにいる。なんて、できなかったから。顔を上げた南沢の頬が、まるで桃のように熟れている。
「大丈夫か、南沢」
「おう。ありがと……ンっ」
噛みつくような接吻に、おろおろと戸惑う視線。
それを遮るようにして、容赦なく俺は舌を進めた。裏側からなぞって歯列から喉奥まで。息苦しさなんか知るものか。
最後にべろりと舐めた唇は、酷く乾燥している。
「っ……ふ」
さっきまでの涙で照る瞳とは違った輝きの彼のそれに、一瞬にして心奪われた。
「てめ……いきなり何すんだ」
「すまんすまん、喉乾いてたから余計に」
彼のくるくる変わる表情が、やがて一つになって。
「……予告ぐらい、しろよ」
それは予告したら全力で答えてくれるということなのか、南沢のデレの分かりやすさに顔を弛緩させると、彼は顔から火が出るぐらいばっと頬っぺたを真っ赤にして、お前なんかだいっきらいだ! なんて叫び出す。ああ、俺も大嫌いだよ、南沢。















次回予告に心奪われたほう、ぺたるです。なんて車南可愛いんでしょう。南受けは三南も倉南も拓南も好きですが車南のビックウェイブスが世界を救うと信じてます車南!どっちも素直になれなくて、友達の延長みたいなことを続けたらいいと思います。どっちかが我慢できなくなったら総じてもう片方もデレる、タイミング掴むのが下手なカップルだと私が脱毛します。車南増えて!





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