波瀾万丈温泉物語
*時間軸がひどい
*益田が可哀想
*三人とも同い年設定







「そういえば僕ら同い年ですよね」
切符を受け取った鳥口は、これまた嬉しそうに笑った。






鳥口が温泉に行こうと言い出したのは、ほんの何日か前の事であった。
確かにこの頃ろくに休暇も取れていない。取れていたとしてもなんやかんやで休んでないし寝てないし、挙句の果てに上の者にこき使われ下僕扱いされ事件に巻き込まれと、本当に散々な扱いを受けている僕ら三馬鹿(榎木津談)に、突然願っても見ない誘いが転がってきたのだ。刑事といえど疲れで意識が半分朦朧としていたからかもしれないが、いきなりの誘いに僕も益田も二つ返事でそれを受けたのであった。半ば無理矢理有給休暇をとった。益田に至っては、
「仕事依頼以外のお誘いなんてほんっと久しぶりれすよおぉ」
と限りなく末期に近い重症患者だったのだから、このまま仕事に放り出すわけにもいくまい。
「青木くうぅん!あおきくんもきますよねぇえ?」
酔っ払いに絡まれている気分だ。そういやこの頃街の巡回なんて平和な仕事受けてないな…。久しぶりの「日常」の記憶を取り戻しながら、僕はやっぱり益田の愚痴相手をした。






「あ、着きましたよ。いやはや、箱根の事件の後だとなんだか虫のすわりが悪いですねぇ。座りと言えば列車の洋椅子は固かったですねぇ。尻が痛い。ぢの患者さんとかいたら絶対乱闘騒ぎになってますね」
「そそそ、そんなぁ、榎木津さんじゃあ無いんだか、ら」
「…今益田君の前で榎木津さんの名前を出すと発狂するかもよ」
「んー?とりぐち君なんか言った?」
「鳥口君真顔やめてくださいあとさっきから乱闘騒ぎとか発狂とか言うのやめてください結構招き猫の事件トラウマなんだからあああああ!」
「あー…もう感染済みかぁ…」益田の榎木津さんへの愚痴が十三分の一弱程終わった丁度その時だった。美しい紅葉の朱に染まった温泉街を目の前にすると、どっと肩の力が降ってきたような気がした。知らない土地に来ると何もかもが新鮮だ。益田に忘れ物の注意をするのも忘れ、煉瓦色の地上にいち早くと降り立つ。鳥口が不憫なものを見るような視線で益田を見守る。…不憫なものを見るような目線で見守る、とはかなり矛盾しているような気がするがまあいい。まともに人間の言語を使えない益田に代わり、鳥口が僕に近づいてきた。本人が言うに短く刈り込んでいたらしい雀色の髪が、周りの若い男から見たら少し長めに見えた。彼はそれなりに男前だから、少しぐらい長くたってそれなりに映える。こけし呼ばわりされる僕とは大違いだ。神妙な顔つきになっているのが悟られないように、こっちから話題を振ってみることにした。
「どの宿にします?」
「折角来たんだからちょこっと高めのところにしましょうよ。皆それなりに持ってきたんでしょ?」
にかり、快活に歯を見せる青年の背後に前髪を伸ばした男の幽霊が一人。
「益田君が息を引き取らないうちに宿に着かなければいけないみたいだね」
「青木さんは絶対死なないで下さいよ?二人も運ぶのは流石の僕も大変だから」
益田君と一緒にされてたまるか。一応刑事だから筋肉ぐらいついてるんだぞ!…なんて、僕らは内心学生の修学旅行ような気分だった。



だが今後予想もつかないような、正に「最悪」という文字がこれ程似つかわしいような出来事が起こることなんて皆目解らなかった。





(筆跡:青木文蔵)






やっと書けたよ温泉ネタ!三馬鹿すきでつらい!三人でわちゃわちゃしてるのが好きです





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