吊革を掴んでいた手がずるりと滑って、そりゃあ毛糸の手袋なんてしてたら当然なんだけど、重力的なやつに引きずられて俺は一瞬で目が回った。バスはスピードに乗ってる真っ最中で、乗客なんか一ミリも気にしてない。
流石にこの調子で頭打ったらただじゃすまないかな!
とか思う前に、視界はぐるっと半回転して、止まった。うわっ、と声が出る。世界の高さがだいぶ下がる。脇腹が暖かくなる。目の前にはスマホいじってる綺麗なお姉さんのストッキングがあった。

「このトンマが!」
「えへへ、ごめん」

お前が三国さんぐらいの体格だったらもう支えきれてなかったぞ的なことを、剣城は早口の小声で言った。
剣城はやさしいなあ!
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