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The dear devil was found. It is destiny to love it if it is destiny to fight again. Oh, you are my fallen angel.




哀腕に抱かれた act.1


※一部凍×飛×凍の流れが(蔵飛前提です。)あります。なんでもOKな方はスクロール。















「なあー、蔵馬頼むべ。このとおーりだべ」

「はあー。そんなこと自分たちだけでやりなよ」

「冷てーべ蔵馬!一緒に死線をくぐり抜けた仲だべ!」

「こんな時だけ友情をあてにしない」

「鬼!悪魔!死神!冷血漢!エロ狐!」

「5つめ微妙ですよ陣」

どんなに悪口を云われようとも、あくまでも冷静沈着に対応する蔵馬だった。訂正する際にも、顔色1つ代えないところが蔵馬の蔵馬たる所以であろう。しかも、自宅のソファーでそのすらりとした脚を組み読書を楽しみながら。ばかりか、優雅に自ら淹れた紅茶を含みつつ。陣の再三の嘆願を視線さえ交えることなく。これでは、陣でなくとも泣きたくなるというもの。

蔵馬にしてみれば、飛影以外の者をこうして自室に招き入れ、話しを聴いているだけ譲歩しているのだ。とでも云いかねない。はっきりと断言するならば、蔵馬は非常に不機嫌であった。せっかくの休日。百足に愛しの邪眼師のご尊顔を拝しに赴いたが、パトロール中とかで追い出され、仕方ないと自らを諫めながら魔界を後にしようとした時、1番会いたくもない黄泉に出会いくどくどねちねちと昔話から始まり嫌みだか口説いているんだか判らないセリフを散々うけ、漸く解放(正しくは黄泉を置き去り。)されたかと思えば、幽助に掴まり探偵家業、それでは、と、別れ際桑原君に遭遇、厄日か!と、内心思いながらも、レポート提出間際の憐れな姿は涙を誘うに充分であり、そのまま桑原家で家庭教師に仕事を変更。終わった、そう思ったところでこれだ。真夜中近くに帰宅の途につき、エントランスに妖気を感じた時の胸踊る歓喜した気持ちを返せ!と、詰りたくなる蔵馬だった。

「半日だけでも付き合ってくれていいべ!」

「・・・」

無視。

「んじゃ8時間!」

「・・・」

紅茶を一口。

「じゃ、じゃ、4時間!」

「・・・」

ページを1枚ペラリ。

「ええーい、どーんとまけて5時間でどうだべ!」

「まけてって。どちらかといえば、それ、こちらが云うべきじゃないかい。それに、さりげなく時間を増やさない」

「じゃ、引き受けてくれるだか」

「やだね」

取りつく島もないとはこのこと。

「蔵馬ー!」

「・・・、陣。俺が笑っているうちに離れるんだな」

それはまさに極寒に咲く一輪の薔薇。美しさゆえに近づけばその棘によって死をみれるだろう。

「こ、コエーべ蔵馬。てか、一瞬妖狐に見えたべ。んにゃ、なっただろうおめば!」

「兎に角、駄目」

彼の人を人前に曝すなど言語道断だ。彼に虫が寄ってきたらどう責任とってくれるというのだ。

「・・・。ふーん。蔵馬は見たくはねーだか」

陣は正面攻撃が不利と悟ると、側面攻撃へと切り替えた。難攻不落な城ほど、意外なところが突破口となるものだ。案の定、蔵馬の冷静な翡翠の瞳に興味がたゆたう。

「・・・。ありません」

じゃなんだその間は。と、陣は内心でもって突っ込みながらも尚続けて攻撃。

「可愛いと思うだがなー、飛影」

「・・・」

よし!あとひと推しだべ!

「可愛い服で、お帰りなさいませ御主人様、とか」

「やろうじゃないか陣、全部俺に任せてくれ!」

「お、おう」

陣の手をとった蔵馬の瞳は、先ほど迄見せていたものではなかった。そして、陣のなかに、蔵馬ムッツリ疑惑が浮上した瞬間でもあった。





※ ※ ※





「ふざけるな!」

飛影の悲痛とも怒号とも聴こえる叫びが、蔵馬のマンションに響いたのはそれから数日後のことであった。

「いいじゃない少しの間」

「ほうー、少しの間だと。じゃ貴様がそれを着て街を歩け!」

「無理」

「なんだと」

「だって飛影サイズだもん。俺じゃ無理」

決して身長が小さいからとは云えない蔵馬。本当は身長のことを少なからず気にしていると知っているがゆえに。だから、いつもサイズと云い代えているのだった。

「くっ!・・・、百歩譲ってだ、普通の」

こうなるであろうと予測していた為、蔵馬は取って置きの魔法の言葉を放った。

「雪菜ちゃんが貴方の為に選んだのに」

「・・・っ!貴様という奴はー」

案の定である。パクパクと窮したように唇を開閉した後、非難すかのようにこちらへとその赤々とした瞳でもって一閃を投げつけた。しかし、それも予測のうちだと云わんばかりに、蔵馬は誰からも称賛をうける美しい微笑を愛しい飛影へと向けたのだった。

「着る、よね」

飛影が項垂れのは云う迄もなかった。





待ち合わせの場所へと赴くと、ロリータ服に身を包んだ凍矢が顔を染めて立っていた。白地にピンクの小さな花がちりばめられ、水色のフリルがふんだんについたミニスカート、白いフリルのカチューシャは中央に大きなピンクのリボン、短いスカートからのぞく脚には黒いレース調のパンスト、爪先が丸みをおびた白いブーツという出で立ち。青い髪と瞳にそれらはよく似合っていた。一方ラフジャケットを羽織り下はデニムパンツな姿の陣。こちらが到着しているにも関わらず凍矢を褒め称えている。こうして、ダブルデートという図式が出来上がった。そう、陣は前々から片恋していた凍矢とこの度めでたく相思相愛に。実は、互いになかなか云い出せずにきてしまったことも知ることになる。陣はデートデート、と再三に渡り凍矢を説き伏せようと試みたのだが、何れも不発。「魔界では誰かに見られる」、「男同士とバレたら迷惑を」、「2人きりだと恥ずかしい」。それらのセリフをうけ、陣は脳裏に救世主になるであろう蔵馬を浮かべたのだった。人間界で女装してダブルデートをすればいいんだべ!そこで、冒頭になる訳である。

一方蔵馬は。ダブルデートをしてなにが楽しいのだ。しかも、凍矢と飛影に女装迄させて。という心境であった。実際、最初、陣からそれを聴かされ際、正直目眩を覚えた蔵馬だった。長時間もの間、そんな可愛い飛影を前に生殺しは真っ平ごめんである。目の前に愛しい飛影を眺めて終わり。なんて、デートは却って蔵馬には拷問に値したと云える。それに、いくら友人とて、他人のイチャイチャを目の当たりしたら、それはそれで悲し過ぎる。それゆえに拒否をとなえたのだ、が、予てより飛影に似合うのではなかろうか、という服装があった。まさか陣がそれに類する煽り文句を云うとは予想外ではあったが。使える。その邪な妄想は膨張の一途を辿ったのだった。ただたんに女装して、などと云えばマンション共々炭クズになるのは必定、人助けだと云い訳がたつし、魔法の呪文をとなえさせすれば飛影はおそらく否とは云わないであろう。

結果は云わずもがなであった。

飛影も蔵馬好みのゴスロリ調に仕上がっていた。全身黒のワンピースを身に纏い、短い裾からは白いフリルがこれでもかと。胸元をぐるりとハート型に大きく飾る白いレース、(胸のなかには蔵馬特製シリコンが2つ。)があしらわれ小さな黒のシルクハット風の帽子が頭上の右端にちょこんとのり、大胆な黒のアミタイツはガーターで止め、すらりとした脚を黒のニーハイ、バックにはモコモコした黒いウサギ。そう、雪菜ちゃんが、などというのはこれを着せたいが為の真っ赤な嘘。

チラチラと幾人かがこちらを見ながら通り過ぎてゆく。

「な、なあ、蔵馬、可笑しくはないか?」

「なに云ってるべ!可愛いに決まってるべ凍矢!やっぱり蔵馬に相談してよかったべ」

「し、しかし、先ほどから視線を感じるのだが」

「可愛いからですよ」

飛影がね。と、内心蔵馬は烏滸がましく、それとも、不遜と云うべきか、付け加えていた。

前もって調べていたレストランに向かい、互いに隣に並ぶように着席。ランチを終えたら、お決まりではあるものの鼠が主役のメルヘンランドへご招待。今日が初デートという陣と凍矢へのささやかなお祝い。飛影も最初は乗り気ではなかったものの、陣と凍矢の為にと思い直してくれたようで思いの外協力的でよかった。服を着せるのは駄々をこねたが、ここにきて状況を把握したのか常の彼の態度だ。

ランチに選んだ店はなかなか美味しい。ハズレではなかったことにひと安心する蔵馬。今度は2人で来たいものだ。目の前では、予測通りというか、なんというか。凍矢の3歩下がったかのような良妻?ぶりに、少しだけ羨ましく感じた。陣も、漸く手に入れた幸せで顔は脂下がっている。

「ね、飛影。俺も食べさせて、あーん」

「バカか貴様は。1人で食べろ」

瞬殺。一刀両断。切れ味抜群。

これだもんなー、・・・

そっちがそういう態度ならば。

蔵馬は唇の端のみをあげるという技を、誰よりも心得ていた。そんな笑みさえも、この男がすると魅了される。

するり、と、真っ白なテーブルクロスの下、飛影の蠱惑的な太ももへと手のひらを移動した。

「!き、貴様」

「フフフ」

「は、離せバカ。食事中に」

「ちょっと触ってるだけじゃない」

「・・・、ふぁ、んっ」

こ、このエロ狐!調子にのるな。そう、云いたいのは山々であるが、下手に騒ぎたてれば己の身になにがおきているか一目瞭然。我慢、我慢。忍耐だ忍耐。しかし、その飛影の努力を嘲笑うかのように、蔵馬の手のひらが更になまめかしく動き、とうとう下着の隙間から侵入をはたしたのだった。

「「と、トイレ!」」

ガタッ、と派手な椅子が倒れる音が2つ。それに伴い、ミニスカートを翻しつつ慌ててトイレに駆け込む影が2人。漆黒の髪の持ち主と青い髪の持ち主、が。

蔵馬はひっそり微笑を浮かべるのに対し、その原因を造ったもう1人はこともなげに。

「あちゃー、ヤりすぎたべ」

反省の色なく、その真っ赤な頭をガシガシと掻きながら1言云ってのけたのだった。あるいは、蔵馬より性質が悪いと云えよう。

「・・・。意外にがつがついくんだね陣」

「可愛くてつい、あはは」





2人はトイレに駆け込むと共に、互いに目を合わせた状態で硬直の像と化していた。苦笑いさえも浮かべられない。互いに、今、下半身がどのような状況になっているか明々白々。乾いた笑みをやっとのことで1つ零れた後、互いにその場にずるずるとしゃがみこんだ。

「き、貴様もか」

勇気を総動員して飛影が凍矢に問うた。

「・・・。あ、ああ。お前も」

「・・・。あ、ああ」

今1度視線を重ねて、苦笑。結果、互いの瞳には、真っ赤な顔をした自分自身を見出だしたのだった。

1人、ここで“処理”するつもりだった。が、しかし、バカでスケベな奴は1人ではなかった。

「お、俺」

「なんだ、はっきり云え」

「自分でさえ処理したことないのに、・・・」

「・・・。は?じゃ、貴様、陣ともそういう」

「あるわけないだろう!キスだってまだ経験したことないのに!今日が生まれて初のデートだよ!」

「声がデカイバカ!」

初デートでそのうえこんな場所で盛ったのかあいつ。意外と手が速い。それとも、今迄待ち続けた反動が一気に爆発したのか。にしても、自慰もしたことないとは、あの魔界で暮らしてきた者とはとても思えない。些か呆れたが、そういえば、と過去を振り返った飛影だったが、思い出したのは凍矢に同情するより悲惨な情景。そうだった、あの狐はそんな手順など全く無視だった。告白のようなものを聴いたその日のうちに、奴の部屋の天井の色を嫌というほど見させられたのだった。次いでに、揺れ動く己の不甲斐ない脚も。そして、いつしか躰に刻み込まれた快楽。

「どうしたら」

「・・・、見るなよ」

飛影は凍矢をおいて1人個室へと入ろうとしたのだが、可哀想なほど切羽詰まった声が凍矢から届けられた。

「おい!お前1人で楽になるのは卑怯じゃないか!」

「チッ。・・・、じゃ、俺がヤってるの見て同じようにしろ」

「あ、ああ。判った」










2012/4/17

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