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The dear devil was found. It is destiny to love it if it is destiny to fight again. Oh, you are my fallen angel.




遺伝子1/2 act.1


※Wパロ?ら★ま1/2飛影。たんに飛影を女の子にしたかった(爆)。ら★まの美味しいとこだけ借りて、世界観は幽白です一応は。なんでもバッチコーイて方はスクロール。















飛影のその秘密を蔵馬が知ったのは、随分と以前であった。最初こそ信じられずに、疑いの眼差しを返したものだが、彼からその証拠を見せつけられれば、否応なしに信じるしかない。しかし、目の前でのその変化には驚愕の極みであったのは確かであった。一瞬、性質の悪い幻覚かと思ってしまったほど。が、しかし、飛影は飛影。そう、例え水を被ってしまったら“女の子”になってしまう特殊な躰であっても。そして、摩訶不思議な躰は、お湯を頭から被ると元通りになるのだった。

飛影曰く、「氷女の血がそうさせるのだ」と、不本意そうに嘆いていた。怪我をしても、百足内のポッドでの治療はよほどでない限り拒否する。あるいは、飛影は蔵馬へと医療を依頼する。その為百足内では、躯と時雨しかしらない、トップシークレットに値していた。

「ねえ、飛影。明日海に行こう」

「却下だ!冗談じゃない!」

誰が好きこのんで海などに行かねばならないのか。己の恥を曝す結果を生むだけである。水のある場所など真っ平ごめんだ。入った瞬間“女”になってしまう。海など、最たる場所に他ならない。だが、蔵馬は引き下がらなかった。

「幽助たちから誘われてるですよ。断れないじゃないですか」

「い、や、だ!」

「ふーん。じゃ、貴方が雪菜ちゃんのお兄ちゃんだって、桑原君に云っちゃおうかなー?」

実は彼女は既に彼が妹であると気づいている。そのあたり、流石に血の濃さを感じ面白くないのだが。だのに、飛影は彼女が気づいているとは知らない。まあ、そこで妥協策として桑原君の名を出したのである。なんだかんだと云いながら、妹には甘い。その可愛い妹の思い人にも。その彼には未だもって知られたくはないらしい。

「貴様という奴は!」

何故、いつも人の足元を掘るのだ、と、怒りがふつふつと沸く。

「行くよ、ね?」

ニッコリと微笑みながらの脅迫に、飛影は渋々ながら膝を屈したのだった。この黒い微笑に勝てたためしがない。





※ ※ ※





待ち合わせの場所で、幽助が陽気に手を振る。

「おう、蔵馬!・・・。てか、隣誰だ?」

飛影であると気づいた者は、その場その時では妹雪菜のみであった。

朝起きると共に、飛影は冷たいシャワーを頭から浴びせられ躰を変化させられた。蔵馬自らの手によって。夏でなかったら、蔵馬を蹴り倒していたに違いない。寒がりの飛影には、冬場は女には絶対になりたくはないと思ってもいた。その後、あれよあれよという間に女の格好をさせられ、今に至る。ブスッ、と一文字に結ばれた唇。赤い大きな瞳。漆黒の髪は綺麗にポニーテールにされ、キャミソールにミニスカート。そのスラリとした美脚は目をひく。通行人の幾人かは、その美脚に息をのみながら通過してゆく。

「えっと、こちら、飛影の妹」

蔵馬はどんでもないホラをふいた。だが、水を被って女になった己自身であると訂正も出来ない。

「は?おめー、なに馬鹿な。飛影の妹なら」

「こっちじゃねーか」と、続けようとした幽助の口を蔵馬は手のひらで塞いだ。同じようにぱちくりしているぼたんに対しても、無言の牽制を忘れない。そして、それらをニッコリと行うところが蔵馬たる所以であっただろう。

おそらくは飛影は、蔵馬の薬草かなんかで女の姿を無理矢理させられているのだろう。それが、桑原と雪菜以外の者たちの見解だった。幽助など、内心で蔵馬の趣味と決めつけた。“この”蔵馬ならば、やりかねない、と、確信さえ抱いている。

「なにー!?飛影の妹だと!」

案の定、桑原君は悲鳴に近い声をあげ、まじまじと飛影を見つめている。想像していたより、ずっと可愛らしい姿に却って桑原は困惑さえしていた。

「じろじろ見るな!殺すぞ」

可愛らしい声とは対照的なセリフは、彼そのものだった。

そして、恐ろしいことに、それとも、怖いもの知らずか、桑原はなんとその場で飛影の胸をわしづかみ。そればかりか、形を確かめるような動き。刹那、辺りの空気が氷河の国に匹敵するほど凍りつく。

「あり?ほんもんだ。て、こたあー、マジで飛影の妹!」

どうやら桑原は、変装(女装?)した飛影だと思ったらしい。だが、その行動は1人の男の逆鱗に触れた。2人の関係を勿論知っている者がここには揃っている。その蔵馬の表情を見るなり、幽助やぼたんが反射的に青ざめ、傍らにいる静流や螢子の背中にそれぞれ隠れたのを責められようか。

「桑原君」

自分自身におこったことが、あまりにも恥ずかしかったからか、それとも、性急すぎたせいであるのだろうか、飛影は硬直したまま。そんななか、蔵馬だけが動いた。ギリッ、と桑原の不埒な手を掴み、寒気を呼び込む微笑を浮かべた。

「この手はなにかな?」

「わ、わ、わりー。て、て、てっきりパットかと」

「飛影の大切な妹は、俺にとっても妹。意味、判りますよね、桑原君」

口元は笑っているが、目は完全にすわっている。と、いうか、完璧に異次元にイっている。桑原はコクコクと、機械人形のように頷くしか術はなかった。

その後、電車で1時間ほど揺られ目的地へと。

そして、個室の更衣室で飛影は声にならない悲鳴を1人あげた。バックに入っていた水着。無論、蔵馬が用意したものだった。黒地に大きな白いドット、胸元は大きくカットされ申し訳程度に白いリボンが中央に。下も同じ柄。しかも、紐で支えなければならないデザインに、飛影は真っ白になったのは云う迄もなかった。

女性陣はそれぞれ可愛らし水着に着替え、更衣室の前で未だ出てこない飛影を待っていた。

「飛え、・・・っと、違った、えっと」

慌ててぼたんは自らの口元を抑え、雪菜の方をチラリ。名前、どうすんのさー、と、この場にいない蔵馬に向けて嘆く。電車に乗り込むと同時に、飛影は寝てしまい、蔵馬は蔵馬で1度も飛影を別名で呼ばなかった。このままじゃ、色んなことが雪菜ちゃんにバレちゃうじゃないか、と、ヒヤヒヤものである。それに、飛影と蔵馬からの激昂はなにがなんでも阻止したい。すると、雪菜はクスクスと微笑むと、扉の向こう側にいる飛影に向けて呼びかけた。

「“飛菜”さん、着替え終わりましたか?」

「ありり?雪菜ちゃん“あの子”の名前いつ蔵馬から聴いたのさね」

不思議そうにぼたんは雪菜に尋ねた。

「フフフ。いいえ、聴いてはいませんわ。あ、皆さん先にどうぞ行ってらしてください。私が飛菜さんを待ちますので」

「いいのかい?」

「ええ。私、待つのは得意なんですよ」

意味深に応え、優しく微笑む雪菜。外では、準備万端の男性たちが呼んでいる。

「そう。じゃ、ここは雪菜ちゃんに任せて、皆行こう」

なにかを察した静流が、この場を救ってくれた。パタパタと駆けてゆく皆の後ろ姿を見送り、雪菜はまた飛影に呼びかける。

「飛菜さん、どうですか」

どうもこうも、未だ屍と化している飛影は動くことさえ儘ならない。こんな水着着られるか!

「・・・」

だが、このままいつ迄も雪菜を待たせる訳にもゆかない。それに、今の己は、雪菜からみれば“飛影の妹”なのだ。蔵馬が己を気遣って嘘をついたことは判っている。少々複雑な思いはあるが、おとなしく、その虚像を演じなければならない。下手な動きをみせれば、なにかを感ずかれる恐れがある。最悪、なにかのアクシデントで男の躰にでも戻りでもしたら、この躰の秘密がバレ忌み子だと云ってしまうことになりかねない。それでなくとも、先ほど“ひな”と呼ばれたことに、一瞬冷や汗をかいたばかりなのだ。

はあー、と、1つため息をつき、渋々飛影は水着へ着替えた。個室の更衣室を出たところで、雪菜が微笑む。

「とてもお似合いですよ、飛菜さん」

「・・・。何故、俺の名を」

「フフフ。なんとなく、です。行きましょう」

「ゆっきなさーん!可愛いっす、天使っす!よくその水着似合ってますよー」

桑原は鼻を下を伸ばしっぱなしで、雪菜を褒め称えている。

「ありがとうございます。和真さんが選んでくれたおかげです」

雪菜のそのセリフに、隣で聴いていた飛影は額に青筋をたてた。青地に白い縦縞。しかし、デザインはワンピースではなく、己と同じように紐。胸元はまあ、己よりはカットが小さいからその点はよしとしよう。が、桑原と蔵馬の下心が透けている水着では、褒められたところで舌打ちを禁じえない。

「クスクス。どうしたの、飛影。水着気にいらなかったの」

「おい、今日俺はその飛影とやらの妹じゃなかったのか」

互いに、耳元にかろうじて入る程度に声を抑えての会話だった。

「ごめんごめん。でも、よく似合ってるよ、それ」

「フン。誰かさんの下心がバレバレだ」

「あはは。まさか、桑原君と同じ趣味とはね」

「雪菜の紐など引っ張りでもしたら、斬るからな」

「あれ?貴方のはいいんだ」

途端に真っ赤になる飛影に、さりげなくを装い蔵馬はその漆黒の髪に口づけた。

「ありがとう。我が儘聴いてくれて」

「・・・。フン。こんな格好1度きりだ」

本音は死ぬほど恥ずかしい。そもそも、女の躰になってしまった己を、蔵馬以外に見せることさえも恥ずかしいのだ。だが、こうして、隣で雪菜が楽しく微笑む、蔵馬も優しく己を見つめている。それらは、悪くない。胸に込み上げてくる温かな潮騒も。










2012/2/25

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